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社内を巻き込む、「CI」の力

狭義の日本と広義の欧米 「デザイン」の定義差によるブランドへの影響

小山田育氏(HI(NY))

「リブランディングしたいので、カッコいいロゴをつくってほしい」。こうして完成したロゴは、ブランドが成長するための武器となりうるのか。ニューヨークでアートディレクターとして活動し、数々の企業のブランディングに携わってきたHI(NY)の小山田育氏が、ブランディングにおける「デザイン」に対する日本と海外のとらえ方の違いを考察する。

見た目だけのデザインとは?日本と海外のデザイン定義の違い

日本でブランディングについて話題になるとき「見た目だけのデザイン」という言葉をよく耳にします。ブランディングはブランドの本質をデザインで消費者に伝わるように表現する経営戦略。企業が経営を行う上で乗り越えるべき課題があり、それをデザインで解決します。

なぜ見た目だけのデザインになってしまうのか考えたとき、ブランディングする順番に問題があると気づきました。

ブランディングにおけるデザインのステップは、①ブランドのビジョンや強みなどの本質を見極め②その本質を整理し概念化し(ブランドDNA)③概念化した本質を体現し(VI:ビジュアルアイデンティティ)④消費者がブランドに触れるすべてのタッチポイントでの世界観をつくり出す(ブランド・コラテラル)です。日本で一般的に言われる「デザイン」は、この③④の部分にあたります。

欧米では①から始まるすべてを「デザイン」と表現しますが、この概念はまだ日本で浸透しているとは言えません。ブランディングにおいての「見た目だけのデザイン」とは、①②というブランドの土台となる部分を飛ばして、③④、もしくは④のブランド・コラテラル(名刺、Web、内装、パッケージ、広告、販促物など)だけを単発でデザインすること。これでは砂上に城を建てるようなものです。

特に、かつてはブランドの印象を左右するほどの影響力をもっていた広告。広告で打ち出される世界観だけである程度のブランドコントロールも可能でしたが、近年のITの急速な進化とSNSの普及によるタッチポイントの劇的な増加で、広告がブランドに与える影響力は薄まりました。

広告はあくまで、多岐にわたるタッチポイントの中のブランド・コラテラルのひとつにすぎない、という位置づけを認識し直す必要があります。他のコラテラルと同様、①②③でブランドの土台をしっかり構築し、このブランドDNAやVIに沿って、ブランドのLook and feel(印象、雰囲気)を表現することでさらなる広告効果が見込めます【図1】。

図1 ブランディングと広告、それぞれへの投資による企業価値の変化

※Millward BrownによるBrand Z Rankingsのデータを基に、筆者作図

見た目以外の部分のデザイン ブランドの本質とゴール

③④のデザインを考えるためのガイドラインとなる②(=ブランドDNA)を構築するためには、①ブランドのビジョンや強みなどの本質を見極めることが必要不可欠です。

日本では①②は、まだデザイン領域として認識されていませんが、この部分の構築なくしてブランドの成長に貢献できるデザインはできません。

以前は、世界中の多くの企業が売上という可視化しやすい指標をゴールにブランド戦略の成否を測ろうとしてきました。しかし近年では、その先の情緒的で可視化が難しい『ビジョン』が最終ゴールとしてあり、そのビジョンの達成をサポートするために企業活動の成功=売上達成がある、という考え方が主流になってきています。これはそれぞれのブランドが達成したいビジョンによって、ブランドの成功の定義が異なるということ。

海外ではブランディングにおけるビジョンの重要性が浸透しており日本との企業構造の違いもあるため、会社の規模にかかわらず、すでにビジョンが明確なことがほとんどです。しかし、日本では...

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