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社内を巻き込む、「CI」の力

ブランディングは「CI管理」ではない!必要なのは変化を想定したロードマップ

松尾任人氏(インターブランド ジャパン)

1980年代前後に起きた、企業がロゴや社名変更を行うCIブーム。CIブームの際に日本で生まれたブランドに対する誤解とは。また、当時の影響が現在の企業ブランディングに与えている影響とは。インターブランド ジャパンの松尾任人氏が解説する。

ガイドラインを遵守するだけではブランディングとは言えない

かつて日本にCIブームと呼ばれる時代がありました。それから40年ほどが経ち、CI活動はブランディングという言葉に置き換わっていきましたが、ブランディング=CI管理という認識の企業がまだ多いように感じます。80年代のCIにおいてその活動は、企業の存在価値を高めていく統合的な活動でした。ロゴタイプやマークなどビジュアルアイデンティティの統一のみならず、企業の哲学や理念を体系的に整理し、社員活動のベクトル合わせを含むものであったはずです。

あるべき姿を定め、行動の指針を定め、視覚や言語を通して顧客の情緒に訴えていくというアプローチは、現代のブランディングにおいても基本的には同じなのです。ただ、「CI管理」とは、CIをガイドライン化し、ロゴやシンボルマークの使い方を管理することであり、これだけではブランディングということにはなりません。

しかし、半世紀近くが経った現在も、ブランディング=CI管理という認識がまだ根強く残っているのは、なぜなのでしょうか。

つい最近までブランディングは、企業経営者にとっての優先事項ではなかったのではないかと感じています。それでも競合他社との戦いに勝ち残っていく必要から、現場が動きブランディングのプロジェクトがスタートするのですが、スローガンやデザインガイドラインなどの方針をつくり上げた段階でチームの役割が終わってしまう。ブランディングの経験を積んだプロを外部から採用することもないため、時代に合わせたアップデートがなされず、積極的な取り組みが継続的に行われない。

こうしてロゴタイプやマークなどの知財を管理するという、既存の組織やルールに取り入れやすい部分だけが残ったということだと思います。

この40年の間に表現やコミュニケーション、顧客に伝える手段は格段に進化しました。社会やマーケットの環境も大きく変化し、各社の領域での競合の位置付けも大きく変わっています。ビジネスそのものが刻々と変化しており、その変化を新たな機会に変えていくのがビジネスとも言えます。

私たちインターブランドが、ブランドを“A brand is a living business asset”=「ブランドは常に変化するビジネス資産」と定義している理由がここにあります。また、ブランディング=CI管理という認識にギャップを感じる理由でもあります。ビジネスが変化するに伴ってブランディングは変化をすべきであり、一度定めたガイドラインを遵守するだけでは、ブランディングとは言えないのです。

ブランドとビジネスを進化させる原動力

ブランドの意味についてさまざまな言説がありますが、私は「人々とビジネスをつなぐインターフェイスである」と考えるとわかりやすいと思っています。

インターフェイスですから、テクノロジーの進化によってアップデートを繰り返します。かつてCIブームが起こった時代と比べてみてください。テクノロジーやコミュニケーションは大きく変化しました。

80年代に駅のホームや電車でビジネスパーソンが手にしていたのは新聞でした。お茶の間の王様はテレビでした。しかし、今では駅や電車で皆がスマホを見ています。家庭ではテレビよりも長い時間、SNSやYouTubeにつながっています。ブランドのタッチポイントは、小さなものでは時計サイズ、大きなものではビル壁サイズのスクリーンへと変わっていき、映像やインタラクションもそのブランドらしく振る舞うことが必要になってきました。

ビジネスにも多くの変化がありました。インターブランドでは毎年、世界のベストグローバルブランド100のランキングを発表しています。ブランドの...

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