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企業における「インハウスデザイン」の真価

楽天/スマイルズ/貝印

SDGsを始め、社会における企業活動の持続可能性が注目される今、企業は顧客満足の追求のみならず、社会に対する企業としての姿勢を示す必要が生まれています。その実現のためには、企業の理念や姿勢をコミュニケーションの接点となる、あらゆる場面で表現していくことが求められますが、こうした背景から改めて、インハウスのクリエイティブチームが担う役割に注目が集まっています。

業態も歴史も異なりながら、企業の理念を大事にする3社のインハウスクリエイティブ部門の責任者がニューノーマル時代の「インハウスデザイン」の真価をテーマに議論しました。

社内リソースを駆使してできるトライ&エラーに優位性

河上:楽天グループでは2018年、グループ全体のデザインを体系立ててブランド価値向上を目指す組織「楽天デザインラボ」を立ち上げました。当グループのCCD(チーフクリエイティブディレクター)を長年務めてくださっている佐藤可士和さんから、「デザインは経営の核となるもの。楽天全体のデザインクオリティを高めていくことで、楽天ブランドの価値最大化を目指そう」と提案いただいたことがきっかけです。インハウスデザインの強みは、目まぐるしく変わる環境変化や意思決定に対して、スピーディーに対応できること。

例えば、今回のコロナ禍ではソーシャルディスタンスの啓蒙活動やそれに関わるロゴやポスター等の配布、エッセンシャルワーカーに対する感謝動画の配信、厚生労働省が配布する接触確認アプリ「COCOA」の利用促進などを行いました。楽天が掲げる「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションのもと、全社を挙げて取り組み、アウトプットとしてデザインとして落とし込まれたものを提供することができました。

このような 急速かつ大きな変化にも、スピーディーに対応できるのは、インハウスのデザインチームならではの強みだと思います。皆さんはいかがでしょう。

野崎:社内にデザインチームがあると「とりあえずやっちゃおう」というスピーディーな意思決定につながりやすいです。社内の組織であれば施策の内容自体が、明確になっていなくても動き出すことができますが、外部に発注する場合には、こうした臨機応変な施策はできませんよね。

またスマイルズでは衣食住の領域で多様なブランド群を展開していますが、コロナ禍においては各ブランドの変革も必要とされています。ポジティブに変革がしやすいタイミングにおいて、社内に使えるデザインのリソースが潤沢にあることは、新しい挑戦を推進します。一見、固定費と捉えがちなインハウスデザインも、見方を変えればコストを掛けずにトライ&エラーを繰り返すことができる。これはむしろ可能性と言えるのではないでしょうか。

鈴木:私は、GREAT WORKSというクリエイティブエージェンシーのCCOとして仕事をしながら、貝印においては広報宣伝部、及びデザイン部の部長を務めています。貝印では、プロダクトデザインや広告、コミュニケーションの開発など、インハウスデザインチームを率いる立場と言えます。

GREAT WORKSに入社する以前には、自動車会社の宣伝部門に所属していたので、インハウスデザインに関してはいわゆる“出戻り組”。そうした私の立場で見ると、社内リソースを把握できているインハウスデザインチームの強みは大きいと感じます。社外から提案する場合、広告部や広報部といった各部署が抱えるKPIに対してコミットすることはできます。でも、そのKPIが、企業として目指している顧客に提供したい体験価値の一翼を担えているかというと、なかなか難しい。

企業におけるデザインとは、フォルムの話だけでなく、その企業の姿勢や哲学といったものが表現されていることが求められます。そして、その表現に他社にはない独自性が現れる。その意味で、企業の理念や哲学を深く理解しつつ、社内にあるリソースを駆使して、より冒険度の高いものにトライできる、インハウスデザインチームがあることで、おのずとイノベーショも起こりやすくなると思います。

インハウスだからこそ生み出せる新しい価値

河上:「楽天デザインラボ」は発足して3年目。楽天グループでは最も歴史がある楽天市場にはじまり、トラベルやフィンテックなどあらゆる分野に事業を展開し、楽天経済圏と呼ばれるエコシステムはどんどん広がっています。

それに伴い、人材やプロダクト、ノウハウといった各事業に蓄積されている多くのリソースを、どう楽天ブランドの価値向上に生かしていくのか?これまで以上に人々と社会に寄り添い、「ともに発展していく」というスタンスをブランドとしてどう体現していくのか?そうした課題にも社内リソースを組み合わせることで、楽天グループならではの新しい価値を生み出せる可能性がまだまだあると考えています。インハウスデザインの可能性という意味で、皆さんは、どのようなお考えをお持ちですか。

野崎:当社のクリエイティブ本部は、もともとはインハウスのデザインチームでしたが、現在は社外の仕事も受けており、その割合は半々くらいです。社内でたくさんの実験ができるので、その実績は他社の仕事をする際の強みになっています。一方で、社外の人たちと仕事をすることで、自分たちの知見が広がるというメリットもあります。

自分たちのリソースや実力だけでは手が出ない分野も、社外の人たちと仕事をして接点ができることで、経験や知見といったリソースが社内に蓄積されていく。こうしたサイクルを回していくと、結果的に社外にあるリソースも、社内で使えるようになるんです。

鈴木:エージェンシーの立場で提案すると、どうしても上澄みの情報をもとにデザインを持ちかける形に終始しがちです。しっかりとプロダクトにまで落とし込んだ提案は、なかなか難しい。けれども例えば、貝印のインハウスデザインチームが、他の企業に対して提案するとしたら、メーカーの中にいる人間しか知り得ない情報を踏まえてプランニングできる。これはインハウスデザインの強みを生かした大きな可能性になるので、今後そうしたコラボレーションの機会は増やしていきたいですね。

いろいろな企業と組んで、デザインレベルで協業のメリットを出せるコラボレーションができれば面白いですし、お互いの刺激にもなるはずです。

河上:それぞれのインハウス組織において、背景や取り組みも様々でしたが、感じているメリットは共通するところがありましたね。経営に近いところにデザイン組織がある強みや可能性を生かし、ブランドの成長を加速していくことが、デザインの大きな価値になっていくと思います。本日はありがとうございました。

楽天
クリエイティブ&CX/UX
デザイン戦略部
楽天デザインラボ マネージャー
河上洋樹 氏

東京芸術大学卒。ビーコンコミュニケーションズにて複数の外資グローバルブランドのアートディレクションを担当。2016年に、よりブランディングに深く関われる環境を求めて楽天に入社。楽天グループ全社のロゴリブランディングや、FCバルセロナなどのスポーツスポンサーシップにおけるブランド露出などのデザインをリード。2018年、デザインラボ設立へ参画。楽天コーポレートブランドのクリエイティブを中心に、ブランドをより好きになってもらうために格闘中。

スマイルズ
取締役CCO
(チーフクリエイティブオフィサー)
野崎 亙氏

京都大学工学部卒。東京大学大学院卒。2003年、イデー入社。新店舗の立ち上げから新規事業の企画を経験。2006年、アクシス入社。デザインコンサルティングという手法で大手メーカー企業などのビジネスプロデュースや経営コンサルティングに従事。2011年、スマイルズ入社。全ての事業のブランディングやクリエイティブの統括に加え、業態開発等も行う。さらに、入場料のある本屋「文喫」など外部案件のコンサルティング、プロデュースも手掛ける。

GREAT WORKS KK
CCO
貝印
広報宣伝部・デザイン部 部長
鈴木 曜氏

北欧のクリエイティブエージェンシー「GREAT WORKS」東京支社の取締役CCOであり、上海支社の董事。CDとして手掛けた作品は、ハリウッドのコンペティション“A-List”や、日本代表で出展した“Globes”等、数多くの受賞歴を保有している。個人でもWeb Creation Award Web人賞や、Forbs JAPAN 2019「世界を変えるデザイナー39人」にも選出されているクリエイター。2018年より総合刃物ブランド「貝印」において外部委託としてデザイン部部長を兼務している。


  

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