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フランス消費トレンド

なぜ、フランス人は「手書き」を重視するのか? 現代まで受け継がれるカリグラフィーの文化

山本 真郷氏/渡辺 寧氏

ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

チョコレートが入った紙袋に潜むフランス人の心遣い

日本では、相手に礼節を尽くすには、Eメールよりも「手書きのメッセージ」が望ましいとする考え方が根強く存在しますが、果たしてフランスではどうでしょうか。今回はフランスの「手書き文化」について紹介します。

少し遡りますが、今年2月に取引先である広告会社の社長のフィリップが当社を来訪したときのこと。面談後に小さな白い紙袋を手渡されました。バレンタインシーズンということで、中にはチョコレートが入っていました。彼の話によれば、そのチョコレートはショコラティエになりたての息子さんがつくったもので、感想を聞かせてほしいとのことでした。

フィリップを見送り、チョコレートが入った紙袋をデスクに置いた時、袋に描かれたエレガントな装飾文字が目に留まりました。ブランド名が印刷されているのか?と思い、読んでみると、なんと私の名前と当社の住所が書かれた「手書き」のカリグラフィーでした。

紙袋に施されたカリグラフィー。

現代まで脈々と受け継がれている カリグラフィーの文化

後日フィリップに電話し、チョコレートの御礼と感想を伝え、袋に書かれた装飾文字についても感動したことを伝えると、「プロのカリグラファーに依頼したんだ。どうだ、きれいだろ?」と得意気でした。カリグラフィーは西洋の書道とも呼ばれ、現在も結婚式、ファッションショー、映画祭などの特別行事の招待状や席札で用いられているそうです。

カリグラフィーはハレの日のものですが、日常の中でもフランスでは「手書き」のメッセージが重視されています。例えば、日本と同様に履歴書のカバーレターは手書きが望ましいとされています。応募者の誠意や熱意を見極めることに加えて、採用プロセスで筆跡診断が行われることがあるためです。

フランスでは古くから...

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