新型コロナウイルスによって様々な社会問題が起きる中で、企業やブランドはどのように立ち向かうべきなのか。数々の国際的な広告賞の審査員を経験し、Connectionの代表を務めるティモ大槻氏の考えを聞く。
ブランドコミュニケーションが大きく変化する時代
ここ4~5年の間、カンヌライオンズなど運よく各国の国際広告賞にて審査員として招待される光栄なことが多く、元々の情報源であった業界紙や国際的に活躍している仲間達の情報に付け加え、新たな発見や気づきも多くありました。
まず大きくは視聴者の対クライアントに対する向かい合い方、そしてそれによる各国のブランドのコミュニケーションの変化です。
そもそも一方通行的な広告展開が古いと認識されるようになってから結構経っていると思います。そして、その続きの流れとして対話的な広告が増え、今となっては透明性やブランドとしてのソーシャルグッドのスタンスが問われるようになってきました。ソーシャルグッドのスタンスも初期段階ではアウトプットとして部分的な実施さえしていれば良しとすることから始まりましたが、今となってはアウトプットだけでは逆効果で、企業理念や本質的な変化が求められるようになり、ブランドとしての本質自体にソーシャルグッドが求められています。
要するに意図的ではなく、本質的に求めないといけない状況なのです。
私が実際に審査した項目「Film Craft(動画広告のクラフト部門)」で多かったのですが、わかりやすいくらい広告のアウトプットも商品広告から、ブランディング広告が増えていき、企業理念や本質のコミュニケーションを図ろうとするものが大半でした。インターネット動画広告の登場以降、さらにストーリー性の高い映像表現が増えていることもその影響の一環だと思います。
やっているフリは通用しない ブランドにも透明性が求められる
現在、世界中で発生している新型コロナウイルスの問題がこの流れを促進させているように思えます。これは、アメリカでのBlack Lives Matterや、コロナ初期段階で起こった海外でのアジア人に対するヘイト行動がきっかけとなっています。
冒頭で述べたように、それらの問題にただ反応して広告展開をした企業やブランドの多くはSNS上で叩かれる事になるなど、逆効果となってしまったケースが多いです。
コロナの影響により、様々な人々の本質、企業の本質が露わになっており、今まで多く行われてきた表面だけを取り繕った広告の価値はゼロに等しく、マイナスにもなり得るのです。いまブランドには、社会の問題に対して“心から向き合っているか”が大事とされてきています。いわゆるフェイクや、やっているフリはもう通用しない時代に突入したのです。
そのためには、まずは...