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コロナと製造業

モノがあるからこそ実現する、お客さまとの取引(前編)

玉井博久氏

新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響を受け、オフラインからオンラインへと、私たちの生活スタイルは大きく変容している。新しく登場した生活スタイル、価値観を捉えることができれば、企業もまたオンラインへのシフト、すなわちデジタルトランスフォーメーションが実現しうるのではないか。製造業企業に所属し、マーケティング実務を担う玉井博久氏が全7回の連載で、その可能性について解説していく。

ニューノーマル時代の日常はすでに上海で体現されていた

新型コロナウイルス感染症とそれに伴う外出自粛、そしてリモートワークをはじめとする非接触経済の社会的な推進の影響で、私たちは突然「何かを購入するため、わざわざ外出する必要はない」という考え方を突き付けられた。ただ、この考え方がコロナ前から存在していた都市がある。中国の上海だ。私も上海のメンバーと日々やりとりをしているが、そんな彼らが2016年頃から「ランチを買うために、わざわざオフィスから出ることはないな」と言うようになった。

上海ではウーラマなどのデリバリーサービスが台頭してきて、ランチはわざわざオフィスから出なくても、会社に届けてもらえば良いと言うのだ。

世界中がウィズコロナ・アフターコロナの新しい生活様式と言っている内容を、上海は4年前くらいから体現していたことになる。上海はスマホさえあれば、なんでも呼び出せる環境であって、コロナがあろうとなかろうと、基本的に何かを買うために外に出る必要がなくなっていた。

そんな上海のある中国では、Googleチャイナの元CEOの李開復氏からOMOという概念が提唱され、近年D2C(顧客に直接接点を持つDirect to Consumer)やO2O(オンラインとオフラインをつなぐOnlineto Offline)などのマーケティングキーワードよりも注目されている。

OMOとはOnline Merges with Offlineの略称であり、オンラインがオフラインを融合する、オンラインの中にオフラインが入り込むという概念だ。この概念を理解することが、コロナにより急速にオンラインシフトする中、今後どの様に製造業が顧客と商取引をしていくのか、その対策のヒントになると考えている。

商品をお客さまに販売することを考える時、常にリアル店舗やリアルなお客さまとの接点が起点となった商取引の姿をイメージしてしまう。この考え方を一度捨てないとOMOは理解が難しい。OMOはリアル店舗とかインターネットとか、そういう垣根など全く考えず、全てがオンラインであると考えるところから始まる。

あらゆる日常のリアルでの行動はスマートフォンやセンサー、カメラを通じてデジタルのデータとして採取可能になっている。いつどこで誰が何をしたのかが、それがたとえリアルでの出来事でもオンラインのデータとして記録されることになる。私たちはどこにいてもオンラインの世界に存在しているという考え方だ。

OMOを簡単にまとめると...

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