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新規顧客が獲得しづらい今 既存顧客の深掘りに売上拡大の活路がある

市川純子氏(J&Tプランニング)

新型コロナウイルスの感染拡大で顧客接点がつくりにくくなり、新規顧客の獲得が難しくなっている。それでも既存顧客の深掘りで既存ブランドの売上は拡大できるとJ&Tプランニング 代表取締役 市川純子氏は言う。今、求められるマーケティング戦略とは何か、市川氏に話を聞く。

Withコロナ時代にブランドに求められるもの

新型コロナウイルスの影響によって、ECの積極的な利用や、テレワークの推進など、生活の様々な面でオンライン化が進んでいる。消費者が「会う」「行く」といった物理的な行動をしなくなり、企業にとってみれば、従来のチャネルだけでは顧客接点がつくりづらい状況が生まれている。結果として、新規顧客にアプローチできない、と感じているブランド担当者も多いのではないか。

このような状況下で、「企業はいまこそ既存顧客に向けた強いブランドづくりを行うべき」と、J&Tプランニング 代表取締役 市川純子氏は話す。

「これまで、短期的な売上拡大を重視し、新規顧客にばかり目を向けていた企業には、マーケティング戦略を見直す大きな転換点が訪れています。Withコロナの時代に突入したいま、顧客から選ばれるブランドになるためには、既存顧客に目を向け、ファンづくりを強化する必要があるのです」(市川氏)。

続けて、市川氏は「ブランドの担当者は、『どうすれば商品・サービスを使ってもらえるか』だけではなく、購入した後についても考える必要があります。『どうしたら使い続けてもらえるか』を考えることが、これからのマーケティング戦略に欠かせない視座です」と話す。

よりエンゲージメントの高いファンをつくるためには、一過性のプロモーションではなく、ブランドへの信頼を醸成し、使い続けてもらうためのコミュニケーションが重要となる。

使い続けてもらうためには情報を発信し続けることが重要

では、実際に使い続けてもらうブランドになるためには、どのようなことに取り組むべきなのか。市川氏は、その手法として「コンテンツPR」を提唱する。

コンテンツPRは、顧客に伝えるべきブランドの情報をきちんと練り上げ、それを「コンテンツ」として発信し、メディアと消費者を動かしていく手法。顧客とのつながりを強化する手法だ。

「ロングセラー商品ほど、良い情報すなわちコンテンツのタネを持っています。ロングセラーである理由が必ずあるんです。それを掘り起こしてコンテンツとしてきちんと伝えていくことが大切です。売り手にとっては当たり前の情報でも、きちんと伝っていなければ、顧客にとっては『新しい情報』となります。新規に認知を獲得したり、購入してもらうのが難しい現在の環境では、知名度が高いロングセラー商品にこそチャンスがあります。それを活かす手法が私たちの得意とするコンテンツPRです」(市川氏)

情報を扱う専門家としてのJ&Tプランニングの強み

市川氏は、情報を扱う専門家として、リアルタイムで変わっていく環境変化について、常に意識しているという。例えばこの夏は「マスク肌荒れ」の啓発をいち早く行っている。オンライン会議では、距離が近く肌荒れが目立つという顧客のインサイトをとらえた。このように、リアルタイムで変わる消費者の関心や社会課題とブランドの強みをつなげることで、どんなことでもコンテンツになり得るのだ。

ただし、エビデンスのないコンテンツを発信してしまうと、消費者にとって価値がないだけでなく、ブランド毀損にもつながりかねないと市川氏は指摘する。

「『マスク肌荒れ』も、専門家や医師にヒアリングをしながら、細かくかつ正確に医師と情報開発を行い、事実を基にエビデンスを開発しました。この情報社会においてブランドは、消費者がさまざまな分野に精通しており、専門家並みの知識を持っている、ということを念頭におかなければなりません。当社は食品・ヘルスケア分野において、長年パートナー企業とともに、報道に値し、消費者にとって有益かつ客観的なコンテンツを届けてきました。環境や暮らし方の変化に伴いタイムリーに細かく、です。さらに、100人以上のドクターや研究者とのネットワークもありますので、客観的なエビデンスやデータをゼロからつくり出すことも可能です。そこからソーシャルデザインの起点を見つけたり、コンテンツを提案したりしています。こうした活動がクライアントから評価され、10年、20年と長いお付き合いをしていだいている企業もあります」(市川氏)。

J&Tプラニングが手掛けたソーシャルデザイン起点の事例を紹介

ここでは、実際にJ&Tプラニングが、ソーシャルデザイン(社会課題を解決するためのデザイン)を起点として、商品・サービスの価値の転換を図り、コンテンツ発信に取り組んだ実績を紹介する。どちらの事例も、消費者に伝わっていなかった「価値」を掘り起こし、「コンテンツ」として発信した結果、既存顧客により深く刺さり、売上向上につながったケースだという。ロングセラーこそチャンスがある、という市川氏の主張を裏付ける成果だ。

1. サバ缶

サバ缶の価値転換だけではなく、クロスMDも実現


当時「保存食」だったサバ缶を日常的に食べもらうため、「東日本大震災でダメージをうけた漁業を応援すること」と「日本人を魚で元気(健康)にすること」をソーシャルデザインの起点とした。国内漁獲高の第1位がサバ類であることから、サバ缶が売れれば、日本の漁業そのものの価値も上がり応援につながる。さらに、無添加であるサバ缶の「汁」に着目し、栄養の専門家や医師と徹底的に論議。サバ缶の汁には魚の栄養分がまるごと含まれていることがわかった。

そこで、いつもの料理に缶詰を使ってもらう「缶たし」レシピを考案し、汁の活用や食べ方の提案など、コンテンツを発信。さらに、「缶たし」の書籍も発刊し、書店で缶詰販売、スーパーで書籍販売、という新しいクロスマーチャンダイジングも実現した。

2. 女性用カミソリ

「顔そりで美白」という発想で女性理容師さんを応援


カミソリの価値転換では、「女性理容師の応援」をソーシャルデザインとした。男性も美容院に行くようなり、理容院の苦戦が続く中、女性理容師が女性に顔そりサービスを提供する「顔そりサロン」が立ち上がり始めていたため、その応援を決めた。実際には、うぶ毛が「くすみ」の原因であることから、「顔そりと美白」の関連性の高さを実証するため、皮膚科医とともに「顔そりの効果モニター」を実施。

くすみはもちろん顔そりが古い角質も一緒にケアできることがわかり、見た目と肌の状態を短時間でケアできることがわかった。そのエビデンスをコンテンツとして消費者へ届けることで、カミソリがただの顔そりからスキンケア用品に。結果的に「顔そりサロン」が多く立ち上がるきっかけにもなった。

    ファンづくりの3つのポイント

    POINT. 1

    どうしたら“使い続けてもらえるか”に視点を向ける

    POINT. 2

    ブランドの“新しい情報”をタイムリーに発信し続ける

    POINT. 3

    ソーシャルデザインを起点として、ブランド価値を転換する

ブランド成長を担う新たなパートナーPR会社ってどう付き合えばいいの?

広告からコンテンツへ、ペイドメディアだけでなくトリプルメディアを活用した統合コミュニケーションへとマーケティング活動の軸足が変わるなかで、企業はどのようにして新しい知見であるPRカテゴリーのパートナーを見つければよいのか。クライアントとの長期にわたるパートナーシップが特長のJ&Tプランニングの市川純子氏に、PR会社の能力を最大限引き出すための仕事の進め方について話を聞いた。

    Q:PR会社と聞くとニュースリリース配信や記者会見などのパブリシティ獲得を支援してくれる会社というイメージがあります。

    確かに、一部ではまだPR会社というとメディアでのパブリシティを獲得する仕事というイメージが持たれています。しかし私は2004年にJ&Tプランニングを立ち上げた際、それまでとは全く違う発想のPR会社をつくりたいと考えました。クライアント企業と共有するゴール設定が異なります。メディアへの露出はあくまで手段のひとつにすぎず、私たちはブランドに対する支持率を上げるためのコンテンツをエビデンスベースにつくり、それを通して消費者とブランドとの距離を縮めることを目的に活動しています。

    Q:食とヘルスケアに特化した理由は何ですか。

    前職で勤めていた企業のオーナーである、大手PR会社プラップ・ジャパンを創設した、今は亡き矢島尚氏の影響です。彼から「PRは空気をつくるためにある」と教わりました。そして、広告がつくる認知だけでなく、この空気こそが人の行動を喚起する際に機能する、とも。矢島氏は選挙における投票行動を例に、こんな説明をしてくれました。ある候補者のことをよく知っていたとしても、知っているだけで投票するわけではない。

    有権者は自分のために役に立つと思う候補者に票を入れるわけで、大切なのは認知度よりも支持率だということ。そして支持率を上げるためには『なんとなく好き』ではまだ足りない。

    『絶対好き』にさせるためには、『選ぶべき理由』とそれを語る人(インフルエンサー)を選びその考えを拡げ世の中の空気変えていくことが必要となる。そしてPRパーソンとは支持率を上げるための戦略と戦術を立てる人である、と教えてもらいました。

    さらに勝つためには専門性はもちろん、「クライアントに対して何でも言える関係性の構築が重要」という指導も受けました。私たちに専門性があれば、クライアントとも対等に話せる関係性がつくれるはず、と考え特に情報ニーズが高いと考えた食とヘルスケアに特化することに決めました。

    Q:J&Tプランニングは今後、どのような挑戦をしていきますか。

    自分たちのコンテンツ制作能力、そして発信力を高めるために現在、当社の関連会社でオウンドメディアであるパン屋さんの国内最大級のサイト「パンめぐ(https://panmegu.com/)」の運営を行っています。

    食やトレンドに敏感に一般の方がそれぞれのお気に入りのパン屋さんを紹介するというメディアで、プロのライターではなくて全員パン好きの方が紹介しているところが特徴。

    食に対するインフルエンサーの方たちが集まる場になりつつあるので、今後のコンテンツPRの仕事にも活かしていきたいと考えています。

J&Tプランニング
代表
市川 純子 氏

私鉄系広告会社、PR会社を経て、2004年ヘルスケア、スキンケア、栄養および食専門のマーケティング特化型PR会社「株式会社ジェイアンドティプランニング」を設立。20年以上ヘルスケアのビジネスをサポートすると同時に、数多くの疾病啓発や生活提案に取り組んできた。医療全般、スキンケア、栄養療法などが得意分野。製薬会社、医療機関、化粧品会社、食品会社などのクライアントを数多く受け持つ。動画制作やコンテンツ制作などクリエイティブに強い。日本医学ジャーナリスト協会 会員。

    お問い合わせ

    株式会社ジェイアンドティプランニング
    〒150-0022 渋谷区恵比寿南1-2-9 小林ビル4階
    TEL:03-5768-7339
    URL:http://www.jtplanning.biz/
    E-mail:info@jtplanning.biz

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