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フランス消費トレンド

欧州で広がるチェキの「写真バッジ」──医師に気付かされた製品価値

山本 真郷氏/渡辺 寧氏

ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

フランスの医師からの連絡 写真で人間らしい関係を取り戻す

今月はコロナ禍のフランスから始まった「写真バッジ」活動をご紹介したいと思います。フランスがロックダウンに突入して間もない3月末、新型コロナウイルス感染者の治療にあたる、パリ14区のサン・ジョセフ病院の救急部長オリヴィエ・ガナンシア(Dr.Olivier Ganansia)医師から富士フイルムフランスに連絡がありました。

『我々医師や看護師はゴーグルとマスクを装着して治療にあたっているため、患者に顔を見せることができません。インスタント写真を使い、顔の見える人間らしい環境を整えたいので協力してもらえませんか』

防護具を外せない中で、せめて顔写真を身に着けて患者に安心感を与えたいという医師の想いが込められたメッセージでした。当社からすぐにインスタントカメラ一式<チェキ/instax>を届けました。

数日後、ガナンシア医師から、襟元に笑顔の「写真バッジ」を付けた救急部の方々の写真が送られてきました。切迫した現場のリアルさは到底、理解し得ないですが、感染リスクと隣り合わせの中でも患者を想う姿勢に富士フイルムフランスの従業員一同胸を熱くし、また写真は顔を見せるという物理的な側面以上に見えない思いが伝えられるものなんだと、写真が持つ本来的な価値に改めて気づかされた瞬間でもありました。

「笑顔でお迎えします」と書かれたカメラ専門店カマラの店頭ポスター。

サン・ジョセフ病院、「写真バッジ」と共に。

© Hôpital Paris Saint-Joseph

日本は目元で、欧米は口元で 相手の感情を読み取る

この事例が社内で広く共感を呼び、欧州全域で新型コロナウイルスと最前線で対峙する医療機関にチェキのカメラとフィルムを寄付することになり、現在(6月上旬時点)欧州8カ国、49の病院で「写真バッジ」を活用いただくに至っています。また、フランスでは小売店(家電量販店ブーランジェ、カメラ専門店カマラ他)でも「笑顔でお客さまを迎えたい」として導入が広がっています。

日本は目元で、欧米は口元で感情を表現する文化と言われています。10年程前に放映された...

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