ネットメディアが日常に浸透し多くのユーザーが連日数時間も費やす状況において、ネットでの広告体験の良し悪しはメディアと広告に対する信用や信頼に直結します。しかし現在は様々な要因でネット広告は嫌われつつあり、アドブロックアプリ導入率も増加しています。そこで、ネット広告業界の問題に対するJIAAの取り組みや、広告主が注意すべき点についてJIAAの植村祐嗣氏が解説します。
被害を受ける対象で分類 ネット広告の品質課題
名実ともにマーケティング活動の中核となったネット広告において、ユーザー体験の良し悪しはメディアと広告に対する印象を大きく左右し信頼にも影響を及ぼします。
ネットメディアでの広告体験を守るためには、他のメディア同様に個別企業の努力や工夫と同時に、業界団体での自主的なルールに基づいた協調も大切です。特にこの数年、日本インタラクティブ広告協会(以下、JIAA)は他の広告団体と連携しながら、ネット広告の品質課題に積極的に取り組んできました。
ネット広告の品質の課題について、ここでは「被害を受ける対象」により分類する手法で考えていきます。
①広告主が被害を受ける事象
効率を優先するあまり広告配信先への配慮を怠ったことで生じるブランド毀損や、広告審査をくぐり配信されるフェイク広告(違法・不当な広告や虚偽広告)と同載されてしまうリスクは、広告主に被害をもたらします。詐欺的な手法で広告投資額が詐取されるアドフラウドも広告主が被害者であり、これらの被害を食い止めるための様々なチェック手段やベリフィケーションツールなどが活用され始めています。
②広告媒体が被害を受ける事象
フェイク広告は広告媒体のブランド毀損につながるので、媒体社自身がリスク管理を徹底すべきですし、配信事業者も自覚をもって実質的な対応策を講じるべきです。これらの違法・不当な広告掲載や広告投資の詐取は悪意のある第三者による犯罪行為であることがほとんどであるため、反社会的な資金源ともなり社会全体に被害をもたらします。
③ユーザーが被害を受ける事象
違法・不当・虚偽の広告、広告であることを隠すステルスマーケティング、マルバタイジング、個人情報の不当な収集と悪用などがあります。
体験を阻害する要因を細分化したうえで対策を講じる
次に、最も協調して取り組むべき「ユーザー体験」に関する品質確保への課題を考えていきましょう。
広告接触における不快や不信感を現状のまま放置すると、アドブロック普及が進みかねません。アドブロックは広告配信を止めることだけが目的ではなく、通信速度を速めたり通信量を節約したりすることにもつながるのですが...