テレビは録画視聴で広告はスキップする、スマホでも広告をブロックする有料アプリがダウンロードされるなど、企業の広告が届きづらくなっている現状があります。企業の広告・宣伝の現場では、広告が見られなくなっているという実感があるのでしょうか?あるとすれば、どうしたら広告を見てもらえるようになるのか?テレビCMを中心に広告を出稿する3社の宣伝部門担当者で議論をしました。
広告主の責任者だからこそ「生活者」の感覚が必要
──「広告が見られなくなっている」と感じることはありますか?
肥田:「広告が見られなくなっている」という傾向はデータとしても出ていると認識していますが、それ以上に自分自身がいち消費者として見た時にも「広告がジャマだ」と感じる機会が増えています。ライフネット生命では、広告を考える時には生活者としての感覚を大事にして、邪魔と感じるものや不快なものはなるべく避けようと考えています。
小島:SUBARUの広告は、テレビCMとデジタルに集約しています。自動車は単価が高く、購買年齢層も高いので、広告視聴全般のデータを見ると厳しく感じますが、当社がターゲットにしている世代を考えると、急速に落ちているわけではないと考えています。テレビCMはターゲット層との親和性が高いので、今も重要視しています。デジタル広告に関しては、見せる技術が発達したために、肥田さんと同じく自分が、いち消費者として見たときにもジャマだと感じることがあるので、「自分が嫌だと感じる広告を打たない」という文化を、マス・デジタル問わず社内で築いているところです。
野堀:これは純粋な広告ではないと思うのですが、実はカルビーでは以前、Webサイトにアクセスした人に対して、動画を見ないとWebサイトを閲覧できないという設計にしていたことが一時期ありました。しかしそれは当社の押しつけで、ユーザーにとっては迷惑でしかないのではないかと考え、そのような見せ方はやめました。社内でも広告会社に依頼する際も、強制的な広告の見せ方はしないように、という話をしています。
また、4~5年前は積極的にYouTubeのバンパー広告をはじめ、デジタル広告を出稿していたのですが、自分が生活者としてYouTubeを見るときにバンパー広告は正直あまり見ないなと思いました。場合によっては、ユーザーはバンパー広告や間に入る広告に嫌悪感を抱いたままコンテンツを見ることになり、ブランドの良い印象が残らなくて、ブランドの魅力を伝える広告のはずなのに、これでは本末転倒だとも感じました。そのためデジタルの純広告は減らしています。
小島:デジタルでは誤ったKPIを設定すると、お金をかけて広告をしながらブランド毀損をしてしまうことになりかねないですよね。
肥田:成果を追い求めるのはもちろんですが、その過程において、広告に接触した人に不快感を与えないといった配慮は、広告主の宣伝部門責任者というレイヤーでないとコントロールできないのではないかと感じます。例えば、広告会社に「成果を上げてほしい」などと頼むとどうしても最終の結果だけに目がいきがちです。しかし、その過程でブランドに嫌悪感を抱いてしまう人を発生させるわけにはいかない。広告主側で考えを巡らせて、時には目標を少し下げることも考えるといった配慮が現在、我々に求められていると思います。
ユーザーの体験に「おジャマする」インフォマーシャルも活用
──ユーザーの体験を阻害しないために、どのような広告コミュニケーションを実施していますか。
野堀:カルビーでは...