ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。
アフリカで苦渋の封鎖措置緩和 早くも密集状態に逆戻り
今月はナイジェリアの「Stay Home」キャンペーンをご紹介します。アフリカ大陸もCOVID-19(新型コロナウイルス)対策で多くの国がロックダウン下にありましたが、一部地域で経済再開に向けて封鎖措置を緩和する動きが出始めています。医療体制が整っていないアフリカで制限を緩めれば感染急拡大が懸念される一方で、サブサハラ地域では人口の4割が国際貧困ライン(1日1.90ドル=約200円)以下で生活しているため、制限を続ければ感染以前に飢餓が広がりかねない、という深刻な事情が背景にあるためです。
人口や経済規模の面でアフリカ最大のナイジェリアも都市部(首都アブジャやラゴス州)で施行していた制限を5月4日から段階的に緩和し、経済活動を再開させています。政府は国民に引き続き感染予防としてマスク着用や20人以上の集会禁止を義務付けていますが、都市部は生活を取り戻そうとする大勢の人々で溢れ返り、商いの中心であるマーケットでは早くも密集状態が発生しています。貧困層が集うマーケットで集団感染が起きれば爆発的な感染拡大を招きかねません。
「Stay Home」を伝える工夫 貧困層に感染予防をどう伝えるか?
この状況を危惧した現地のクリエティブ・エージェンシーThe Hook Agency Lagosが「Stay Home」キャンペーンを企画しました。生き延びることで精一杯な貧困層に、ストレートに感染予防を説いても響かないですし、何よりもまずメッセージに触れてもらわなければなりません。そこで、同社は以下のクリエイティブを設計しました。
いま起きている事態を「映画」に見立て、「新作映画の宣伝」を模したポスターを密集地の至るところに貼り出す伝達方法が採られました。ナイジェリアでは映画が代表的な大衆娯楽なので...