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顧客エンゲージメントでコロナ禍を乗り切る!

エンゲージメント行動価値を生みださない!? 「見せかけのロイヤルティ」の罠

剣持 真氏(みずほ情報総研)

利用頻度や購入頻度が高くても、たまたま立地などの都合で選ばれているだけで、消費者が真にその店舗やブランドに好意を寄せているとは限らないのではないか。いま求められるのは、「真のロイヤルティ」。ロイヤルティ研究に詳しい、みずほ情報総研の剣持真氏がそのポイントを解説する。

エンゲージメント行動価値を生む顧客ロイヤルティを見極める

ロイヤルティが高まると、顧客は企業にとって有益な行動である「エンゲージメント行動価値」を生みだすようになるため、企業は顧客ロイヤルティがどのようなもので、いかにして顧客ロイヤルティが高まるのかを知っておく必要があります。

顧客ロイヤルティは、論理的、感情的にその製品やサービスが良いと思うことを示す「態度的ロイヤルティ」と、製品やサービスを繰り返し購買することを示す「行動的ロイヤルティ」に分類されます。

Dick & Basu(1994)(※1)は、この2つのロイヤルティの高低の組み合わせによって「ロイヤルティなし」、「潜在的ロイヤルティ」、「見せかけのロイヤルティ」、「真のロイヤルティ」と4分類する考え方を示しました(図表1参照)。この考え方では「見せかけのロイヤルティ」が特徴的です。これは態度的ロイヤルティが低いのに、行動的ロイヤルティが高いという状態を指します。

※1 Dick, A. S. and K, Basu(1994), "Customer Loyalty Toward an Integrated Conceptual Framework," Journal of the Academy of Marketing Science, 22(2), 99-113.

図表1 顧客ロイヤルティの4分類
出所:Dick & Basu(1997)をもとにみずほ情報総研作成

例えば、会社に行く前にコーヒーを買う人が、通勤途中にあるという理由だけで、特に好きでもない(=態度的ロイヤルティが低い)ショップで、ほぼ毎日購買している(=行動的ロイヤルティが高い)状態がこれにあたります。これは見せかけのロイヤルティといえます。

真のロイヤル顧客がもたらすエンゲージメント行動価値

かつて、ある小売業の方から「見せかけのロイヤルティも真のロイヤルティも、行動的ロイヤルティが同じならば、売上は同じということ。売上が同じなら別に好かれていなくても良い」とのご意見を伺ったことがあります。短期的な売上高のみの視点で考えると、この意見には一理ありますが、これは経営環境が全く変わらないという前提の下でしか成立しない話です。

新型コロナ関連の出来事は、私たちの購買行動を大きく変えました。外出を控えつつ、必要なものを得るには、宅配が非常に便利です。物流の課題を抱えていますが、宅配は今後ますます増えていくことでしょう。店頭での購買を考える上では、立地が極めて重要な要素であり、消費者はその店があまり好きでなくても、立地が良ければ買うこともあったと思います。

これが今回の環境変化により、消費者は立地にとらわれず、宅配している企業を自由に選んで買い物ができるようになりました。「どうせ買うなら大好きなあの店で…」となり、特に好きでもない立地だけが魅力の店を、宅配の店の選択肢として挙げないであろうことは容易に想像できます。企業は...

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