高齢化と生産年齢人口(15~64歳)減少の一途をたどる日本。日本経済を支える労働力人口は低下し、成長エネルギーは逓減してしまうのか。労働力人口の将来を見据え、私たちに求められることは何か。中央大学大学院の阿部正浩氏に解説してもらった。
労働力人口を決定する2つの因数
はじめに、労働力人口がどのように定義されるのかについて説明したいと思います(【図1】参照)。労働力人口は、働く意思があって今すぐ働ける状態にあり、実際に仕事をしているか(就業者といいます)、あるいは仕事を探している最中の人たち(失業者といいます)と定義されています。働く意思がない人たち、あるいは働く意思があっても今すぐには働くことが出来ない人たちは、労働力人口には含まれず、非労働力人口と定義されています。
なお、日本では15歳未満の男女は義務教育課程にあり、仕事に就くことは一般にはできません。それゆえ、労働力人口を把握するための母集団は15歳以上人口となっています。ちなみに日本以外の国々も15歳以上人口を母集団としていますが、アメリカとイギリスは16歳以上人口を母集団としています。
さて、15歳以上人口に占める労働力人口の割合を労働力率(労働力人口比率)と呼びます。この労働力率を用いて労働力人口を定義すると、次のようになります。
労働力人口=15歳以上人口×労働力率
つまり、労働力人口は、15歳以上人口と、そのうち就業を希望し実際に働ける状態にある人々の割合を示す労働力率との掛け算によって求められるのです。すると、もしも労働力率が一定だとすれば、15歳以上人口の減少は労働力人口の減少をもたらします。また、15歳以上人口が一定だとすれば、労働力率の高低で労働力人口の大小が決まることになります。従って、労働力人口を予測するには、15歳以上人口と労働力率をそれぞれ予測して、それらを掛け算すれば良いということになります …