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2030年 人口動態の変化を見据えた新市場開拓の戦略

人口学の理解が有益な議論を生む 将来推計に見る日本の人口の将来像

石井 太氏(慶応義塾大学)

加速度的に変化していく人口構造を正しく捉え、マーケティングを議論するためには、私たち自身の「人口」への知識武装が不可欠だ。人口学のエキスパートである、慶應義塾大学教授の石井太氏が日本人口の将来像を解説する。

静態・動態の違いは?人口を捉えるための2種類のデータ

人口問題を考えるためには、人口学的データに基づいた定量的議論が欠かせません。人口を捉えるための人口学的データには「静態」と「動態」があります。静態とはある一時点の人口の規模や性・年齢などの構造を横断的に示すものであり、日本では、5年に1度実施される総務省の国勢調査が人口静態の全数調査です。

一方、人口は出生・死亡・移動という変動要因に基づいて時々刻々変化しますが、これが動態です。例えば出生・死亡については厚生労働省の人口動態調査、国際人口移動については法務省の出入国管理統計で調査がされています(※1)

ある一定期間の期首の人口静態に、その期間の人口動態(出生・死亡・移動)を加除することによって期末の人口静態を得ることができますが、この静態と動態の関係式を「人口学的方程式」と呼びます。国勢調査がない時の人口静態を人口学的方程式に基づいて計算したデータが総務省の(現在)推計人口です。これは推計といっても実績人口の推計であり、将来人口推計とは異なるものです。

2030年のような将来の日本全国人口については、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(以下、平成29年推計)(※2)からデータを得ることができます。日本の将来推計人口とは、全国の将来の出生、死亡、国際人口移動について仮定を設けて将来の人口の規模・構造の推計を行うもので、平成29年推計は現時点で最も新しい2015年国勢調査に基づいた将来推計人口です。

この推計は、わが国の公的将来人口推計であり、公的年金の財政検証など様々な施策立案の基礎資料として利用されることから、客観性・中立性を保ちつつ科学的に行うことが求められます。

しかしながら、未来の人口の姿や未来の出生・死亡・移動などを、定量的かつ正確に予言する科学的な方法は存在しません。一方、過去から現在に至るまでに観測された人口学的データの傾向・趨勢を専門的観点から捉え、これが今後も続くとした場合の将来像を科学的に映し出すことは可能です。これを投影(projection)と呼びますが、公的将来人口推計はこの人口学的な投影手法に基づき、これまでの傾向・趨勢が今後も続いたとしたらどうなるかを科学的に映し出すものです。

従って、公的将来人口推計とは、将来の人口を予言・予測(prediction)することを第一の目的としたものではないことに注意が必要です。

データから読み解く日本の人口構造の現在と将来

次に投影手法の前提となる人口学的データの傾向・趨勢について、出生・死亡の動向を示す、第二次大戦後の合計特殊出生率と平均寿命(※3)の推移と見通しを【図1】で見てみましょう。これによれば、出生率は1947年の4.54から急速に低下した後、1970年代半ばまで人口を長期的に維持するのに必要な出生率である人口置換水準(概ね2.1程度)前後で推移してきましたが、それ以降、人口置換水準を継続的に下回る「少子化」が進行し、2015年には1.45となっています …

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