二次審査から四次審査、そして最終審査を担当したのは、広告界を代表するトップクリエイターの皆さん。審査を通じてどんなことを感じたのか。また、お気に入りの作品は?14名の最終審査員に、第57回「宣伝会議賞」について講評をいただきました。
昨年あたりから、「ダントツで、この表現が受賞」と言うのがなくなった。今回も、ファイナリストから半分ほどに絞り、また半分、そして半分というふうに、同点再投票というような事態が頻出した。審査員の志向性が多様化したのか?提出されるコピーや企画のレベルが拮抗しているのか?しかし結果は、グランプリ受賞作に見られるように、見事商品特性に立脚しながらも、到達力を高めるために強い擦れを持ち込んだ完成度の高い表現を選ぶことができた。
広告表現は、あくまでも担当商品の拡販を目的とするもので、自己表現の場ではない。極めてクレイバーなマーケティングという科学に乗って、ターゲットである個の関心領域という計数化出来ない領域に踏み込むチャーミングがなければならない。
グランプリ、コピーゴールド、ともに「なるほど」とうならせるパワーがあった。さすがに、ここまでの熾烈な審査トーナメントを勝ち抜いてきた強者だけのことはある。これらのコピーは切れ味鋭く、発想の鮮度で勝負、みたいなところがあるので、そのぶん、賞味期限で言えば短いのではないかな、とも思う。
スピードは速いけれど、持続力はどうか。そんな考えから、私が推していたのは、眞木準賞となったコピーだった。これは、柔らかく本質を言い当てていて、何年でも、ずっと長持ちするコピーのよい例だ。スピードか、持続力か。コピーに求められるものは、場合によって違う。今回、眞木準賞にふさわしいコピーがあって、そのバランスが保たれたのではないかな。
まず、審査を潜り抜けてきたコピーのクオリティにびっくりしました。企業の言いたいことを言いながら、相手の心を自然に動かす。この両立を手離したときに、商品の良さが伝わらなくなる。コピーの魅力が失われていく。改めて教えられた審査でした。グランプリは、とんだ長持ち自慢。商品特性を、こんなにも楽しく伝えてくれるなんて、コピーライティングの本質だなと思いました。早起きして仕事に向かう旦那さんの背中が目に浮かぶようです。
シルバーのPontaで「ポイントを貰わないってお釣りを受け取らないのと同じ」も、訴求ポイントがあざやかでハッとしました。一方で、特性を掴みづらい商品もあります。そういうときほど実はアプローチの幅は広い。Yahoo!の「残りの人生は~」と「息子に聞くより~」は、鳥の目と虫の目という視点の差がおもしろかったです。自分ならどう書くか。それを常に念頭に、皆さんのコピーを見ていました。技術を支えとしながら、いわゆる「巧い」では満足していないコピーたちにワクワクしました。
シルバー以上がなぜ選ばれたのかを考えてみました。※この意見はあくまで僕個人の感想です。◯元彼の目覚ましが、夫を叩き起こし続ける。→「叩き」の強さと「続ける」のまとめ感。「叩き」がないとただの平凡なコピー、「続ける」がなかったら1等は取れなかったはず。◯残りの人生は、何を検索するかで変わる。→今の時代ならではの気付きのあるコピー。◯【昔話】篇→たった一語で作った意外性。◯日曜日の味がする。→チャーミングな造語 …