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REPORT

実務家7名に聞く「リキッド消費」に対する考察と、その対応

「リキッド消費」さらには、この消費傾向との関連性も考えられる「クラスターH」の存在。今、マーケティングの実務家たちは、この消費傾向や増加する「クラスターH」という消費者層の存在を実感しているのだろうか。「リキッド消費」そして「クラスターH」に対する現場の実感、さらにはそれに向き合うための構想を聞く。

リキッド消費拡大の背景には、環境意識の高まりがある?「モノを持たない」ことがカッコよい時代の小売業の課題

パルコ 執行役 営業政策担当
宇都宮誠樹氏

シェアサービスの浸透など近年、市場で見られていた現象について、リキッド消費が提示する概念を用いるとより深く説明できる部分が多いと感じている。そして従来のイノベーター理論から読み解こうとすると「お客さまがわからなくなってきている」という現象についても、リキッド化さらに「クラスターH」という存在から読み解けるのではないかと期待している。

例えば、昨年11月にリニューアルオープンした「渋谷PARCO」は、ファッションでは比較的尖ったラインナップで成功をしているが、それではこのファッションに響いているクラスターは誰なのか、というところまでの分析はしていない。イノベーターである「クラスターA」なのか、それとも自分の興味を持つ一部の領域だけに強いこだわりを持つ「クラスターH」なのかについての考察が必要そうだ。

私たちの時代と今の若年層の大きな違いとして感じることのひとつに、かつてはカッコよいと思われていたものが、オタク的になってしまったことがある。ファッションやクルマなど、今では、そこにこだわりを持つ人が少数派になっているのが好例だ。

加えて若年層を中心に環境問題などへの意識の高まりも顕著だ。そもそも、ファッション的に見ても「モノを持たない」方がカッコよいという矛盾した価値観も生まれている。リキッド消費の背景には大量生産に基づく、これまでの消費スタイルに対する反発も背景にあるのではないかと考える。そうなると、モノを売る小売りというビジネスのスタイルにも、これまでにない変化が必要となるのかもしれない。

顧客がロイヤル化しづらい環境では、CRM施策も難しくなっている。パルコは渋谷をはじめとする「都市型店舗」の他に、食料品など日用品も扱う「コミュニティ型店舗」を展開しており、同じ屋号でも、両者の間には大きな幅がある。それでも現在は顧客向けのCRMプログラムはひとつしかない状況だ。

加えて、かつての日本では消費の主役は中流マーケットであり、そこに照準が合っていた。一人ひとりがこだわりを持つポイントが大きく異なる「クラスターH」が増えている時代においては、CRMプログラムにもそれに合わせた対応が必要とされてくるのではないかと考えている。

モノを買ってもらうための動機付け施策が機能しづらくなっている「所有」を前提としない消費者に向き合う、新しい発想が必要に

パルコ
営業政策部
村主暢子氏

従来の「所有」から、必要な時に必要な分だけを「利用」する、アクセス・ベースの消費へと移り変わっているという実感は強く持っていた。小売業にとってアクセス・ベースの消費への移行は、これまでの「モノを買ってもらうための動機付け」の施策が機能しづらくなるということ。

わかりやすい動機付けの例がセールだ。多くの小売業が、特に夏のセールが効かなくなってきたと感じていると思う。価格を下げるのは、所有を重視する消費者に響く施策であり、そもそも所有する欲がなければ、安くなったから購入しようと思わないのは当然だろう。

リキッド消費に至るまで、消費価値観は変遷を続けてきた。戦後の日本では、まずは量という意味で「最大」が、バブル期には質という意味で「最高」が重視され、ポストバブル世代には「最適」、そしてリキッド消費の担い手はいま「最旬」を求めているのではないかと考える。「いまここで利用する、体験する」ということに価値が置かれていると感じる。

また消費のリキッド化が進むとブランドを記憶しない、そしてロイヤルティを形成しづらい消費者が増えていくことが予測される。すでに20代を対象に「好きなブランド」を聞いても、なかなか具体名が出てこないという事象に直面している。彼女、彼らは、自分のスタイルはあまり固定しておらず、その時々に一緒にいる人たちに合わせて寄せていこうとする意識が強いようだ。誰かと一緒に何かをする体験自体に価値を感じているからだと思う。

今後、小売にとってはロイヤル化しづらい顧客とつながり続けるための方法を考える必要が生まれている。当社では、ハウスカードの「PARCOカード」の優待プログラムについて昨年10月より、これまでの割引から利用金額に応じたポイント付与に切り替えた。これは、蓄積型のポイントプログラムの方が、顧客のファン化につながりやすいと考えてのことだった。

これからは、リキッド消費で分析されているような薄いつながりの顧客とも関係を保ち続けられる工夫が必要だ。体験へのニーズの高まりやロイヤル化の難しさだけでなく、リキッド消費をはじめとする消費価値観の変化は私たちのビジネスモデル自体に見直しの必要を迫ってくるかもしれない。

個人を把握しないブランドは信頼を勝ち得ない ソリッドからリキッドに拡大しても変わらないブランド戦略の必要性

アーキセプトシティ
代表/クリエイティブディレクター
室井淳司氏

私は約2年前にトヨタ自動車の若者向けカーレンタルサービス「Drive to Go」のプロトタイプを開発した(現在は2年間のプロトタイプ運用期間が終了)。これは所有しない若者に対して車を利用してもらうことを目的としたサービスだが、リキッド消費におけるブランド戦略とも通ずるものがあると思う。

シェアやレンタルの場合、所有する喜びを伴わないため、サービス自体の満足度を高めることが大切。その満足度の大半はコストが占めるが、実はコスト以外のものも影響している。それは、そのサービスブランドが、関係性を持ちたいと思うようなイケてるサービスか、そのサービスを利用することはワクワクするのかなど、感情的な要素だ …

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