サブスクの隆盛とCXへの注目が高まる背景にはどのような関係があるのか。ビジネスモデルとマネタイズを専門に研究する兵庫県立大学 教授の川上昌直氏がサブスクの本質を解き明かしながら、企業とユーザーの望ましい在り方を考える。
単なる課金の問題ではないサブスクの本質
ソフトウェアや動画音楽配信などのデジタル分野を中心に、月額定額という負担感の少なさや、比較的簡単にやめられる気軽さから、サブスクリプション(サブスク)が消費者の注目を集めています。2018年頃からは、日本を代表するモノづくり企業や小売サービス企業もこぞってサービスを開始しました。しかし、残念ながら成果をあげておらず、撤退事例も跡を絶ちません。その理由は、事業者がサブスクを単なる課金の問題と捉えていることにあります。
サブスクは「継続課金」や「定額課金」と報じられることが多いですが、企業が自動的に収益を得られる仕組みではありません。本来は、「予約購入」や「継続購入」を意味する「サブスクライブ」の名詞形です。主語は企業ではなく、あくまでもユーザー。つまり、企業がユーザーに寄り添う姿勢を見せられなければ、サブスクが成功することなどありえないのです。そのため、CXの絶えざる精査が必要となります。
本稿ではユーザーの活動チェーンという枠組みを用いて、CXの観点からサブスクを考察。そして、その浸透による影響から、企業とユーザーの望ましい関係性の在り方を考えていきます。
ユーザーの活動チェーンは、[図1]の横に連なる活動です。これは、ユーザーが購入するまでの活動だけではなく、購入後、いかに生活をアップデートし、さらにアップグレードしようとしているのか、そのプロセスを可視化したものです …