購買をひとつのゴールとしていたパーチェスファネルのスコープが購買後にまで伸長。それに伴い、CXという概念がカバーする領域も拡大を続けている。企業が様々な顧客接点が持てるようになった中で、デジタルを活用したCX推進のカギは何か。電通デジタルの小浪宏信氏が解説する。
データ活用環境が未整備だった従来のデジタルマーケティング
企業のデジタルマーケティングは、認知・理解からサイト送客を担うプロモーション部、サイト来訪者をいかにキャンペーン参加や会員登録・初回購入につなげるかを担うマーケティング部、初回購入からリピート購入へと顧客のロイヤル化を担うCRM推進部といったように、様々な組織が分担して業務にあたることが多いものです。
そのため、自ずとプロモーション部は「サイト送客数」、マーケティング部は「CVR」、CRM推進部では「優良顧客率」や「休眠顧客率」といった具合に、部署ごとに別々のKPIや顧客体験シナリオを立て、サイロ化された組織の中で分断してPDCAを推進するマネジメントが一般的でした。
そうしたなか、2010年以降のスマートフォンやFacebookやTwitterといったソーシャルメディアの爆発的な普及を契機に、生活者は企業からのメッセージではなく、口コミによって行動が左右される機会が増加。私たちの価値観や行動様式は変化しました。
そして、企業の取り組みも既存顧客、特にロイヤル顧客層の口コミにより新規顧客の効率的な獲得につなげたいといった意識が高まり、広告・プロモーションからCRMまで一貫したシナリオに則ったデジタルマーケティング戦略、いわゆる「ダブルファネル」で捉えたマーケティング戦略を採用・実践するように変化していきました。
ただし、当初はプライベートDMPの構築がようやく計画され始めた段階。一貫した顧客体験シナリオを施策レベルで実現するためのデータ活用環境は整っていませんでした。そのため、課題感や状況に応じた局所的な施策に留まり、部門分断型のマネジメントが変わることはありませんでした …