東京2020オリンピック競技大会の追加種目のひとつとなり注目が集まるサーフィン。同競技の歴史に刻まれる本大会の自国開催に向けて、日本サーフィン連盟の酒井厚志理事長が今、考えていることとは。
世界中のサーファーが焦がれた夢の舞台、オリンピック
ハワイ出身のオリンピアンであり"近代サーフィンの父"として知られるデューク・カハナモク氏は、水泳で金メダルを獲得した1912年のオリンピックで、愛するサーフィンを競技種目に追加することを国際オリンピック委員会に提言した。サーフィンの競技種目入りは、生涯サーフィンの普及に尽力したカハナモク氏の夢だった。そして積年の夢は世紀を超え、東京2020オリンピック競技大会(東京2020)の追加種目という形で実現する。
世界中のサーファーから大きな期待が寄せられる東京2020に向け、日本サーフィン連盟(NSA)理事長として日本のサーフィン界を支えるのが酒井厚志氏だ。酒井氏は、2011年の理事長就任直後に震災を経験。日本でサーフィンの文化が途絶えないよう被災地を行脚し復旧・復興活動を続けるとともに、サーフィンの「選手の強化」「裾野拡大」「社会貢献活動」の3軸を中心に活動を続けてきた。
近年、特に注力してきたのは「選手の強化」だ。日本でも、世界の舞台で活躍するスター選手が育ちつつある。実際に米・カリフォルニア州ハンティントンで毎年開催される世界最大規模の大会では、2015年に大原洋人選手、2017年と2018年には五十嵐カノア選手が2連覇するなど日本人サーファーの存在感が高まっている。オリンピック開催に向けて、NSAではひとりでも多くの日本人選手が出場し、そしてメダルを獲得できるように強化を図ってきた。
「裾野拡大」施策としては、2016年に公募によって「波乗りジャパン」を日本代表の愛称として採用し、PRに活用。サーファーが注目される環境づくりやサーフィンに対する関心度を高めるべく活動を続けている。
「2018年からは、プールでのサーフィンスクールを実施しています。海まで行かずとも小中学校のプールや屋内プールでスクールを実施でき、安全で季節にも縛られません。サーフィンを体験する機会を少しでも増やしています」(酒井氏)。
「社会貢献活動」としては、全国に70あるNSAの支部が毎年一斉にビーチクリーン活動を実施している。もともと各支部や各ビーチで行われていた有志の活動だが、酒井氏は「ゴミは拾わなければなくならない」「その影響はいずれ私たちに返ってくる」という実感から、全国一斉で取り組むことを決めた …