キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は、LIFULLのChief Creative Officer(以下、CCO)として、グループ全体のクリエイティブを統括し、クリエイティブ人材の育成を担う川嵜鋼平さんに、これまでのキャリアを伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずでは、なかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q. 川嵜さんのこれまでの経歴を教えてください。
僕のキャリアはデザイナーからスタートしました。2004年にイメージソースへ入社し、インタラクティブ領域の制作に携わりました。
当時クリエイティブディレクターの伊藤直樹さん、田中耕一郎さんと、イベントや映像などWeb以外の仕事も手掛ける機会がありました。2人から、複数のメディアを融合させた「統合コミュニケーション」における企画制作の基礎を学んだことで、その後の僕の仕事の領域が大きく広がりました。
29歳のとき、外資系広告会社のビーコンコミュニケーションズから誘いを受け、クリエイティブディレクターとして入社。当時は、デジタルに強いクリエイティブディレクターも、デジタルを含めた統合コミュニケーション戦略を立てられるプランナーも希少な存在でした。そのため、入社当初からクリエイティブ領域に加え、戦略プランニングの業務も行いました。その後、ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパンでシニアクリエイティブディレクターを経験し、2017年5月にLIFULLに転職しました。
Q. LIFULLではCCOとしてどのような役割を担っているのでしょうか?
ブランド戦略、マーケティングからプロダクトデザイン、広告・PRなどのコミュニケーション領域、さらにはR&Dにも携わるなど、クリエイティブに関わることは戦略からアウトプットまですべて統括しています。
デザイン責任者として入社しましたが、1年後には「事業成長のためには経営側にもクリエイティブ領域の責任者が必要だ」との判断で執行役員に就任しました。
LIFULLはビジネスモデルとエンジニアリングで成長してきた会社です。僕が入社したての頃は、ブランディングの意義や重要性が社内に十分浸透していなかったので、まずは「ブランドとは何か」について経営層で話し合い、意識の醸成を図りました。
また本来は、コミュニケーション領域を担うマーケターや広報担当者がさまざまな部署に点在していたり、デザイナーが「制作職」という名でひとくくりにされていたりしたため、各職種の役割を再定義し、クリエイティブ本部にまとめるなど、組織や人事・評価制度の改革を進めました。
Q. なぜLIFULLに入社したのでしょうか。
LIFULLが住まい領域から事業を拡大する際に、核としているのは「常に革進することで、より多くの人々が心からの安心と喜びを得られる社会の仕組みを創る」という経営理念です。私が同社への入社を決めたのも、代表取締役社長の井上高志に「一緒に社会課題を解決する事業をクリエイティブしないか」と誘われたからでした。
要するに、"クリエイティブを通じた社会課題の解決"というLIFULLの目指す方向性に私が共感できたことが重要でした。その結果、今も楽しんで仕事ができています。転職を考えている方にもぜひ、自分が転職先の企業のビジョンに共感できるか否か、を判断軸のひとつにしてもらいたいと思います。
Q. クリエイティビティで社会課題を解決することに関心を持つきっかけがあったのでしょうか。
ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパンに勤務していた際、産学連携の研究開発プロジェクトに携わりました。中でも自身のキャリアを考えるきっかけになったプロジェクトが「NO SALT RESTAURANT」。塩分を摂取できない高血圧患者に向けて、無塩の料理でも塩味を感じることができるフォークを開発し、レストランをオープンしました。
同企画は多くのクリエイティブアワードを受賞したのみならず、世界中の患者の方から感謝の声が届きました。この体験を通じ、クリエイティブの本質とは、社会を動かし、世の中を良くすることだと感じました。
Q. 若手クリエイターにアドバイスをお願いします。
読書を強くお勧めします。学習し続けないと人は成長しません。例えば小説では未来を描く想像力を養い、デザイン書では変化するデザイン理論をインプットし続ける。自分なりの考え方を構築するために、本を通じて考えをまとめる訓練をしてください。
また、常に「何のためにデザインをしているのか」を考え続けてください。僕の場合は、「既成概念をどう超えていくか」という視点をずっと持ってデザインの仕事に携わってきました。なぜなら、今ある社会課題を解決するには、人の意識や価値観を変えることが必要であり、そこにデザインが貢献できる可能性が多くあると考えるからです。
企業の売上、成長だけでなく、仕事を通じて社会にも貢献できる。そんな仕事ができるのが、社会に価値を提案するクリエイターやマーケターの仕事の醍醐味だと思います。
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