人が集まらずに採用が進まない会社は、何ができていないのか。対象の明確化、表現の工夫など、広報・マーケティングでは実践されていることが採用では行われていない。戦略的な広報のコンサルティングを行う、戦略的PRコンサルタント、放送作家として活躍する野呂エイシロウ氏が解説する。
求人する企業側に採用戦略がないのでは?
先日も「優秀な学生をとりたいのだがどうしたらいいのだろうか?」と某製造業の経営者に相談された。「優秀の基準が明確ではありません」と答えた。
・優秀とは成績を指すのでしょうか?
・有名大学卒だったら誰でもいいのか?
・どんな技術を持った人が欲しいのか?
・“サボる”とか“よいしょ”が優秀な学生をとりたいのか?
・転職や起業精神に溢れた学生が望ましいのか?
など、質問を投げかけた。
結局は「上司の言うことをよく聞くYESマンの新卒が欲しい」とのことだった。ボクはすかさず「それは優秀とは言いませんよ」と突っ込んだ。「AppleやGoogleで働いている優秀な人材は違うと思います」と述べたが、それ以上は会話にならない。そう、実は求人をしている方に具体的な戦略がないのだ。
人を採用する目的がボンヤリしている人が多い。「海外進出をするので、ベトナムに赴任できる人」的なことを述べる経営者もいた。「じゃあ現地のベトナム人で良くないですか?」と言ったのだが、それはまた別の話だった。「日本人がいいな」と述べたので、それって先日「中国人を雇わない」と問題発言をした東大の先生と同じですよ、とアドバイスをした。
そう、新卒、中途採用に限らず明確な目的が必要なのである。「どんな技術があるのか?」「どんなことをしている会社なのか?」を具体的に知らしめ、何がほしいのか、会社の目標設定を決め、伝えることが大切だ。すると、「現地採用でもいい」ということになるケースもある。
人材を確保することに一生懸命になって、会社の目標を失うケースも多いので要注意だ。人柄や習慣よりも、成功するための人材確保をする企業の成長が著しいことは言うまでもない。
「残業がありません」などの「○○がない」という表記は危険な会社とみなされる。消去法で求人は無理である。逆に、残業過多のブラック企業であると自分で述べているのと同じだ。自己紹介に例えてみよう。「ボクは殺人をしません」「ボクは詐欺をしません」という自己紹介をする人間がいるだろうか?わざわざ明言するのには、裏がある。「セクハラ・パワハラがありません」「優しい上司です」「教育システム充実」といちいち述べるのは、逆効果である。
不動産会社の広告と同じだ。「駅から徒歩15分の静かな住宅街」というのは逆を返せば寂しい場所だ。「コンビニまで徒歩3分」ということは、スーパーがないから一人暮らしが多く、家族の雰囲気がないということだ。「日当たり良好」とわざわざ明記する物件は良好の時間が限られている。
それと同じだ。「~ない」というのは...