ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。
パリの街中に顔写真を貼りだす前時代的なアテンションの集め方
いまや一般人でも、ソーシャルメディアを通じて比較的、容易に社会からのアテンションを集めることができるようになりましたが、パリには前時代的な方法で有名になったジョン・アモン(John Hamon)という人物がいます。彼の活動は非常に独創的で、「広告」に対する根源的な問いを内包しているので、ご紹介したいと思います。
ジョン・アモンは自分の顔写真(19歳の時に撮影したポートレート)を使ったポスターを2001年から約20年にわたり、街中の建物やモニュメントに貼り続けていました。ボリューミーな髪型にメガネをかけ、微笑みを浮かべた顔写真の下に太いブロック体で「JOHN HAMON」と書かれたポスターは、一見何かの広告か選挙ポスターのように見え、誰も気に留めていませんでした。
しかし長年の露出を経て、彼の顔と名前は誰もが目にしたことのある状況になっていきました。そして、3年ほど前からパリジャン・パリジェンヌたちが「ところで、ポスターのジョン・アモンは何者?」と声を上げ始め、一気に注目を集める存在となったのです。
20年を費やした壮大な社会実験 ポスターを貼り続ける目的
ジョン・アモンは「プロモーションアート」という概念で、活動をするストリートアーティストです。作品に顔写真と名前が使われているにも関わらず、その素性はいまだ謎に包まれています …
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