クリエイターの視点から、サスティナブルとダイバーシティの共存を実現するデザインのヒントを北欧デンマークから全6回の連載でお届けします。
ユニバーサルデザインという概念すらないデンマークの社会
これまで5回にわたり、北欧、デンマークの滞在経験をもとに、社会に潜むダイバーシティとサスティナブルについて、デザイン視点で綴ってきました。今回が、いよいよ最終回です。
私がデンマーク行きを決めたきっかけは、ユニバーサルデザインでした。化粧品のパッケージをデザインする立場から、「ストレスなく使えるものとは?」を起点に、さらには「心をも豊かにするものとは?」というテーマに関心を持ち、"もはやユニバーサルデザインという概念すらない"、というデンマークへ向かったのでした。
障がいや違いは個性であり、強みとなる
最初に過ごした、「エグモント・ホイスコーレン」での寮生活は、私のこれまでの習慣や常識をくつがえす体験の連続でした。「エグモント・ホイスコーレン」では、生徒の半分が何かしらの障がいを持っていました。私はそこで、障がいや違いは個性となり、時に強みになることを知りました。自分だからできることを見つける。そして必要ならば自分に合うように周囲の環境や習慣を変えていけばよい。ゆえにすべてのやり方は個人によって違い、喜びもさまざまである、ということを教わりました。
私はデザインにも、これに通ずるものを感じました。メーカーがつくった商品はお客さまの手に渡った後、徐々に使い手に馴染んでいき、形を変えて、次第にこの世で唯一の物へと変わっていくのだ、と。最初から、完全なものなどないのだろうということを …