1950年代以降の地方からの集団就職や、1964年の東京五輪の開催などを通じ、戦後の東京には人やモノで溢れかえり、一言では説明しきれない複雑さがあった。その"語りにくさ"についてはこれまでも「時間」「空間」の視点から学術的検討が進められてきたが、本著は第3の視点としての「メディア(テレビ)」を通じた試みを提案する。
そこから導き出されるのは「イメージとしての〈東京〉」だ。「時間、空間の視座のもとでは東京の『存在』自体は自明なのに対し、テレビを通じた東京は枠組みが可変的な、イメージとしての〈東京〉である」と著者は語る。
その一部を紹介しよう。テレビ放送が開始されたのは1953年。当時は青少年への影響などから必ずしも好意的には受け止められていなかった。その反発として、NHKが1957年に放送開始したのがドキュメンタリー番組『日本の素顔』だった …
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