キャリアアップナビでは、マーケティングやクリエイティブ職のキャリアアップについて、毎月テーマをピックアップして解説します。今回は家具メーカーからコンサルティングファームを経て、現在はスマイルズで取締役兼クリエイティブ本部本部長を務める野崎亙さんに、これまでのキャリアを伺いました。良い転職は、良質な情報を入手することから始まります。「こんなはずでは、なかったのに…」とならないための、転職情報をお届けします!
Q. スマイルズに至るまでの野崎さんの経歴を教えてください。
大学院を卒業後、家具・インテリアブランドを展開するイデー(現・良品計画)に入社しました。「家具が好き」という思いひとつで同社に就職を決めたものの、入社からたったの2週間で、社長から「京都で新規事業を立ち上げるように」と言われ、驚きました。
京都では、インテリアショップを兼ねたカフェをつくったり、デザインに関するイベントを企画したり、さらにはそのイベントの協賛・協力を募るために企業を回って営業活動もすべて行いました。
見よう見まねで仕事をこなし、その結果、多くの気付きや学びはありました。しかし上司や同僚から、仕事の仕方について一から教えてもらえる環境にはありませんでした。そうした生活が3年程続いた後、ここで得た知識や経験だけでは非常に狭い領域内でしか力を発揮できないと痛感。これ以上、会社に貢献できないと考え、コンサルティングファームのアクシスに転職しました。
私を採用してくれた上司との出会いは、以後の私の人生においても、大変重要なものになりました。上司は私に対して、「プレゼン以外の業務は何もやらなくてよい。君の価値はプレゼン能力だから」と言い放ちました。そうまで言われてしまうと、プレゼンスキルを伸ばすことに集中するしかない。アクシスでは、とにかくあらゆる業種、企業の中期経営計画書や事業企画書を書きまくりました。おかげで広く浅くではありますが、知らない業界はほとんどないと言えるだけの知識を身につけることができました。
アクシスには約6年、在籍しましたが、そこでの経験でイデー時代に足りないと感じていたスキルの幅を広げることができたと考えています。しかし、次第にコンサルタントという仕事の立場上、アイデアを思いついてもその実行までは携われないことにもどかしさを感じていました。
その頃、スマイルズに誘われました。同社の社長である遠山と食事をする機会があり、共感を覚えたことが入社の決め手でした。
Q. スマイルズでは、どのような仕事をしているのですか?
ネクタイ専門店「giraffe(ジラフ)」の事業部長などを経て、現在は、クリエイティブ本部の責任者をしています。店舗開発やデザイン、広報部などバラバラだった部門を集めて、クリエイティブ本部をつくりました。3年前からは自社事業以外の外部顧客のブランディングやプロデュース業務も手掛けています。
Q. 1社目と2社目の経験が今に生かされていると思いますか?
僕の現在の経営上の哲学的な価値観は、イデーにいた頃に培われたものです。イデーの当時社長だった黒崎輝男さんは「(ビジネスを通じて)どのような世の中にしたいのか」を常に考えていました。目先の利益にとらわれることなく、いかに社会に貢献するか…この考え方が私の仕事の哲学に通底しています。そして2社目で、理念や哲学を具現化するスキルを身に付けました。「理念」と「スキル」。この2つは今の仕事にも生かされています。
Q. コンサルティングファームから事業会社へ転職する際に気を付けたことはありますか?
スマイルズに入社後は、コンサルタント時代に使っていた専門用語は極力使わないように気を付けています。専門用語を使いすぎると、優位な立場になろうと躍起になっているように周囲からは見られてしまうからです。
コンサルタントは顧客にとって「先生」のような立場ですが、事業会社に先生は必要ありません。要は、自分が発案したアイデアは、自分で実行にまで移しなさいということです。事業会社ではいかに「実行者」になれるか、あるいは実行者をサポートするよい「参謀」になれるかが重要です。
ですから、すぐに実績をつくろうとするのではなく、まずは周りの人に自分の存在価値を認めてもらうために、人間関係の構築を優先するほうがよいと思います。社内の人間から「あの人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらえることが大切ではないでしょうか。
Q. 若手のマーケターの方へメッセージをお願いします。
専門領域を極めた「I型人材」でも、それ以外の多彩なジャンルにも幅広い知識、経験を持つ「T型人材」でもなく、複数の専門領域を習得している「π型人材」が今後ますます求められていくと思います。
マーケターやクリエイターは「新しいこと」や「斬新なこと」を社内の人間に啓蒙することが企業からは期待されています。そのポテンシャルを感じてもらうためにも、なるべく多くの専門分野の知識を持っている方がよい。私の場合は、その知識がこれまでのキャリアの中で培われたのではないかと感じています。
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