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「言葉」のコミュニケーションを考える

意図理解の難しさ

川添 愛氏

広告・コミュニケーションに欠かせない「言葉」。しかし、私たちは人が言葉を理解するメカニズムをどれほど理解できているだろうか。言語学者の川添愛氏が、「言葉」のコミュニケーションを全6回で解説する。

自分の言いたいこと、つまり「意図」が相手に上手く伝わっている場合、話し手は「自分の言葉が自分の意図を過不足なく表しているから、きちんと伝わっているのだ」と思いがちです。しかし実際は、話し手の発した言葉が適切かどうかに加えて、聞き手が話し手の意図をうまく推測できるかどうかによって、コミュニケーションの成否が左右されます。つまりコミュニケーションは話し手と聞き手の協力によって成り立っているのです。

それを端的に表す例のひとつが、この連載の2回目でも取り上げた「言葉の曖昧さ」です。曖昧さが生まれる要因は私たちが意識している以上に多く、曖昧でない言葉を話すのは、ほぼ不可能です。言葉に曖昧さがある場合、聞き手はどの解釈が話し手の意図なのかを推測しなくてはなりません。

とんち話に出てくる一休さんはある意味、「言葉の曖昧さを利用して、わざと話し手の意図とは異なる解釈を選ぶ聞き手」であると言えます。「このはし渡るべからず」と書いた桔梗屋さんは、「橋」のつもりで書いた「はし」を、一休さんに「端」と解釈されてしまいました。この曖昧さは「はし」が「橋」と「端」のどちらにも解釈できる同音異義語であることから生じています …

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