ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

風光明媚なアルプス山麓にあるハイテク産業の一大拠点
パリから高速列車で約3時間の距離にある、フランス南東部の都市「グルノーブル」。アルプス山脈の麓に広がる風光明媚な土地でありながら、スタートアップや研究機関が集積するハイテク産業の一大拠点でもあります。この地に当社の取引先で、フランスで最も人気のある写真プリントアプリ「Lalalab.」などを擁し、急成長を遂げるベンチャー企業「Photoweb」も本部を構えています。今月は同社を訪問した際に目にした、ちょっとした働き方の工夫をご紹介します。
同社のオフィスに足を踏み入れると、まず目に入るのは外光が差し込むモダンなインナーテラスで作業をする人たちの姿です。いかにもベンチャー企業らしい光景ですが、特に興味を引かれたのは通路や会議室壁面で「付箋」を多用し、オープンにプロジェクト管理が行われていたことと、さらに社内を歩いているときに会議室から漏れ聞こえてくる「牛の鳴き声」でした。
その国の文化に適したファシリテーション方法を探る
「牛の鳴き声」の正体は「Boîte à meuh」(モーモー缶)というひっくり返すと「モー」と音を出す幼児玩具でした。全ての会議室にファシリテーションツールとして置かれ、会議中に特定の人が議論を独占したり、議論があらぬ方向に脱線したりしたときに、会議主催者と参加者が牛の鳴き声で待ったをかけ、時間管理の徹底を図るというのです。
それでは、付箋を使ったプロジェクト管理はどのように行われているのでしょうか。欧州では日程計画を「週番号」(例えば「12月第一週」ではなく「Week49」)で管理するのが一般的です。
同社では各プロジェクトに会議室の壁面を割り当て、壁面を広く使い横軸に「週番号」を振り、縦軸に各担当者が「ウィークリータスク」を付箋で貼っていきます。プロジェクトメンバーは週次で集まり、共同レビュー(付箋の移動、貼り直し等)を行うことで、各々がプロジェクトとの関わりを認識し、持ち場に戻ります …