問題の背景にあるのは広告業界の体質!? 多様性に配慮することが不可欠な時代に
最近、女性を描いた広告の炎上が絶えません。そうした事象の背景にはどのような問題が潜んでいるのでしょうか。ジェンダー問題に詳しいジャーナリストの治部れんげ氏に話を聞きました。
多様化する時代 広告表現のリスクと対応
LGBTやダイバーシティに関する「教育事業」、「キャリア事業」などを実施し、LGBTをふくめ「ちがい」をもつ全ての子ども・若者の課題に多角的に取り組む、認定NPO法人ReBit。代表理事を務める藥師実芳氏に、ダイバーシティ&インクルージョンの視点から広告表現や広告業界について話を聞きました。
藥師実芳氏は、自身もトランスジェンダーであり、LGBTやダイバーシティについての理解促進やキャリア支援など多面的に事業を展開している。広告のダイバーシティについて考えるにあたり、日本の広告表現や昨今の炎上について意見を聞いた。
「マイノリティに限らず、誰でもライフスタイルやバックグラウンド、価値観が多様化しています。だからこそ、例えば結婚式の広告やサービスを考える上で、『20代後半の男女カップル、健常、日本人、両親が健在かつ2人の結婚式に参列でき、一生の記念として友人や職場など多くの人を招いて予算も多くかけたい』というペルソナだけでは必要十分とは言えません。広告やサービスを届けるペルソナが多様化しているからこそ、その多様性をどこまで想定し、排除せず包括するか、つまりは広告やサービスにおけるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の視点が重要なのだと思います」。
また現在はSNSが発達し、属性や価値観が似ている者同士がオンライン上でつながりやすくなったことが、マイノリティの意見が届きやすくなった一因であると話す。
「SNSの広がりにより、属性や価値観が似ている人同士でつながりやすく、コミュニティも多様化しています。国内調査ではLGBTは約3~10%(※)とも考えられていますが、居住地域でカミングアウトをすることにはリスクがあり、声を挙げられない人も少なくありません。しかし、地域を超えてつながり、かつ実名でなくても使用できるSNSは、LGBTという属性でつながりやすく、今まで『ないもの』とされていた声が届きやすくなっていると感じます」。