広告・コミュニケーションに欠かせない「言葉」。しかし、私たちは人が言葉を理解するメカニズムをどれほど理解できているだろうか。言語学者の川添愛氏が、「言葉」のコミュニケーションを全6回で解説する。
言語学では、文の意味を細かく分類します。私たちが直感的に考えるところの「文の意味」、つまり文から論理的に導き出される内容は、「含意」と「前提」に分類されます。簡単に言えば、含意は「その文によって主張されている内容」で、前提は「その文を適切に発するために、事前に成り立っていなくてはならない内容」です。ある意味、前者は「主役」、後者は「背景」のようなものであると言えます。
昔のことなのでうろ覚えですが、食品のチラシか何かで「無添加なのに、おいしい!」のようなコピーを見たことがありました。この文が主張している内容、つまり「含意」は、「(この食品は)無添加である」と「(この食品は)おいしい」の2つです。含意だけを見ると、この文は「無添加で、おいしい」という文と同じですが、「なのに」を使っていることで「前提」がひとつ加わります。それは「無添加の食品は普通、おいしくない」というものです …
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