人工知能を活用する前に、そもそも理解しておくべきポイントとは何か。有効に活用するための土台となる考え方について、人工知能に関する著書も複数刊行している山本貴光教授が解説する。
人工知能というアイデアを理解すること
ここでは、事業で人工知能を活用する際、常に念頭に置きたい基本的な考え方についてお話ししたいと思います。3点に絞ります。ご自身の現状を確認するチェックシートとして読むとよいでしょう。
まず、大前提として現在「人工知能(AI)」と呼ばれているものについて、その基本を理解することが肝心です。人工知能という少々、大袈裟な名前のせいもあって、あらぬ空想や誤解から過度の期待や恐れも生まれがちです。自分の目で正体を見極めておかないと、無数に飛び交う虚々実々の情報に振り回されて活用どころではありません。
例えば、次の問いを見て思い浮かぶことを書き出してみましょう。ネットを検索したり本を見たりする必要はありません。あくまで現時点でのご自身の理解度を自覚するのが目的です。
[問い]──人工知能とはなにか。どのような種類のものがあり、どのように使われているか。どのような仕組みで動くか。何ができて、何ができないのか。そもそも誰がなぜこのようなものをつくろうと考えたのか。どのような歴史を辿って現在に至るか。
いかがですか。すでに勉強していてしっかり書けたという人もいれば、分かった気になっていたけれど、理解があやふやだったなと気づいた人もいるでしょう。
人工知能については、技術的な理解もあればもちろん理想的です。ただ、そこまではいかずとも、人工知能にできることとできないことについて、自分の言葉で人に説明できる程度に理解しておくのは大変重要です。
何より肝心なのは適切な問いをつくること
さて次です。人工知能を使うには、課題を明確に設定する必要があります。人工知能に何をさせたいかです。ただし現在の人工知能は、残念ながら何でも教えてくれる万能機械といったものではありません。人工知能に解ける形で課題を限定する必要があります。先ほど述べたように、何ができて、何ができないのかを理解していないと適切な判断を下せず、ここで躓くことになります。あるいは無理難題の解決を夢見て、時間やコストを無駄にしかねません …