「コピーライターの登竜門」とも言われる「宣伝会議賞」ですが例年、広告業界関係者や志望者に限らず、多くの方々からの応募があります。広告の世界でのキャリアアップを目指すわけでなくても、「宣伝会議賞」に参加したくなる理由とは?コピーライターの安路篤氏に、コピーを考えるスキルが生かせる日常やビジネスの場面について聞きました。
世の中の「真ん中」を突く コピーに必要な論理的な思考
大広でコピーライターとして活動するとともにコピーの講師や審査員などの社外活動も務める安路氏。TCC新人賞を27歳の時に受賞したが、実は入社時はコピーライター志望ではなかったという。「もともとは『海外アーティストに会えるかも』というミーハーな動機で広告業界に入りましたが、想定外のことに入社後、クリエイティブ局に配属になって⋯。いくらコピーを書いてもなかなか採用されず、会社を辞めようかなと思っていた時期もありました」と安路氏は当時の心境を語る。
そんな時、転機になったのは、デザイナーの存在だ。「当時はコピーライターのトレーナーがいなかったため、コピーライターはデザイナーから、そしてデザイナーはコピーライターから仕事を学び合うというキャッチボールの関係がありました」。コピーを書かないため客観的で的確なアドバイスをしてくれるデザイナーとの出会いが、安路氏のTCC新人賞の受賞へとつながっていた。
「そもそもコピーライティングは、自分の思いを吐露する作家の執筆とは違い、常に客観性が求められる」と語る安路氏。自分が書きたい思いを表現する芸術とは違い、常に相手のことを考えながら、ターゲットを想定してどうしたら共感を得られるか論理構築する中で、コピーという表現が生み出されていくという。「まだまだ自分も努力中です」(安路氏)。
就活の面接や商談でも役立つ「相手の気持ちを考える」こと
安路氏に、コピーライティングのスキルがビジネスシーンや日常生活でどのように役に立つかを聞いた。
「僕は大学でコピーライティングの講義の講師をしているのですが、学生からは、『相手の立場になって考えること』が就職活動の面接で役立ったという話を聞きます。就職活動の面接では自分をアピールしなければなりませんが、日本人には謙遜の文化があり、押しつけがましく威張るようなことを言っても印象が悪くなります …