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フランス消費トレンド

車が登場しないルノーの「衝突実験」 ──比喩表現で巧みに比較広告を想起させる

山本 真郷氏/渡辺 寧氏

ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

自動車にまつわる固定観念 ルノーがドイツ車と真っ向勝負

人間はとかく物事をイメージで判断しがちです。広告宣伝はそうしたイメージにメスを入れる術とも言えますが、固定観念のように客観的な裏付けがないまま「AはBだ(であるべきだ)」と信じられている強固なイメ―ジとなれば、変えるのは容易なことではありません。

例えば、自動車の「生産国イメージ」。ドイツ車やスウェーデン車は質実剛健、フランス車は猫足(しなやかな乗り心地)、イタリア車はデザイン性、日本車は実用性(燃費が良くて壊れない)など、個々のブランドを超えて生産国ごとのイメージが世界的に浸透しています。

フランス車のルノーが2000年初頭にドイツ市場で直面したのはこうした固定観念の壁でした。同社の安全性能は当時、業界トップ水準にありましたが、安全性や耐久性といった価値に直結する「質実剛健」というイメージを強固に抱かれていたドイツ車が、堅実なドイツ人に圧倒的に支持されていました。そこでルノーは、安全性アピールを本格化させていきます。

中でも2005年に展開されたテレビCM(日本ではWeb配信)はドイツ人の固定観念を揺さ振り、いま見ても面白いクリエイティブになっています。

ユーモラスな喩えで成功 大破するソーセージ、物悲しい寿司

コンセプトは「Crash Test(衝突実験)」。自動車が「食べ物(自動車の生産国になぞらえた食べ物)」に置き換えられ、衝突実験が行われます。

第二次世界大戦中に流行ったリナ・ケティの優雅なシャンソンをBGMに実験装置に乗せられた巨大なソーセージ(ドイツ車)が現れ、壁に衝突し大破します。続いて、巻き寿司(日本車)、クネッケブロート(スウェーデン車)が大破し、最後に登場するフランスパン(フランス車)だけが、しなやかに衝撃を吸収します。場面が切り替わり、「フランス車が最も安全です」とテロップが流れ、黒ホリの中にフランスパンが新車さながらに再登場し、ルノーのCIが現れます …

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