「競争戦略論」「製品開発論/生産管理論」「経営組織論」…。経営学のフィールドは多岐にわたる。だが、これらの議論はいずれも「企業主語」で語られることが多く、サプライ・サイド(生産者・供給者側)に重心を置きすぎている。その中で、肝心のお金を払ってくれる「顧客」の存在は忘却しがちだ。本書では、需要家視点に即した「デマンド・サイド経営」へのパラダイム転換を提案する。
経営者にデマンド・サイド視点が必要となる理由。それは、企業活動は「顧客」なくして成立し得ないからだ。著者の宮崎正也氏は、「私たちが毎日している仕事を同僚や上司、そしてお客さまに受け容れてもらえなければ、無力感を抱き、悲しい気持ちになる。私たちの仕事の成果は、誰かが受け容れて活用し、その人の役に立つことで『使用価値』が生まれる。社内外すべての『顧客』が、各個人の仕事の成果を連鎖的に受容することで企業活動は成立しているのです」と語る。
宮崎氏の考える「顧客」は社内の人も含まれる広範な概念で、その中でも企業の業績を左右する社外顧客の受容は最も重要だ。そこで、企業は「顧客の受容可能性」を意識した企業経営が必要となるが、従来のサプライ・サイド視点からの経営観では顧客の受容を考えにくい …
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