広告・コミュニケーションに欠かせない「言葉」。しかし、私たちは人が言葉を理解するメカニズムをどれほど理解できているだろうか。言語学者の川添愛氏が、「言葉」のコミュニケーションを全6回で解説する。
「文法」という言葉に良いイメージを持っている人は、そんなに多くないのではないでしょうか。「言いたいことさえ伝われば、文法なんてどうでもいい」「文法は所詮、格式張った文章のためのものでしかない」と思っている人も多いようです。私も学生時代に英語や国語の文法の勉強を面倒だなと思っていた人間ですが、言語学に出合ってから、文法の重要性を強く認識するようになりました。
私たちは、単語を組み合わせて句や文をつくり、それを口に出すことで他人とコミュニケーションを取っています。単語の数には限りがありますが、私たちはそれらを組み合わせることによって、それまでに誰も見たことのない状況や、誰も思いつかなかった考えまで表現することができます。言語学における文法とは、私たちが単語を組み合わせて句や文をつくるときに使っている仕組みのことなのです。
外国語の文法はしっかり勉強した上で意識的に使わなくてはなりませんが、母語の文法はいつのまにか私たちの頭に入っており、意識に上ることはめったにありません。私たちが母語の文法を意識する数少ない場面のひとつとして、おかしな文を耳にしたときが挙げられます。
文というのは...
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