消費者の価格に対する感度がより高くなるサブスクリプションモデルでは、価格設定が成否を分ける重要なファクターとなる。日本マーケティング学会で、消費者行動と価格戦略に関するリサーチ・プロジェクトのリーダーを務める専修大学の奥瀬教授が、サブスクリプションモデルの価格戦略のポイントを解説する
3つの視点からの価格をもとに妥当な価格を決定する
2019年4月、アマゾンがAmazonプライムの年会費を3900円から4900円に引き上げました。4900円という価格、そしてこの引き上げは妥当な判断だったのでしょうか。サブスクリプションモデルの実施にあたって、難しいのが価格の設定。それでは、どのように価格を設定したらよいのでしょうか。
マーケティングの見地から価格設定を考えるのであれば3C、すなわちCompany、Competitor、Customerの視点が必要です。3つの視点からの価格を踏まえて、最終的な価格を決定することになります。
①Company(自社):「いくらで売りたいのか?」
まず、その製品を通常通り販売する場合に、いくらで売りたいのか、という視点です。当然ですが、所有権が移転しないサブスクリプションモデルの場合、その価格は通常の希望販売価格よりも低い価格になります。それではどのくらい低くしたらよいのでしょうか。
ここでは、希望販売価格を契約期間で除した金額が目安になります。つまり、
(Companyの価格)=(希望販売価格)÷(契約期間)
が、Companyの観点からのサブスクリプションモデルの目安となる価格です。
サブスクリプションモデルの中には、対象となる製品・サービスそのものの提供で利益を上げるのではなく、補完的な製品・サービスの購入、すなわちクロスセルを促進させて利益を上げることを企図するものもあります。このような場合には、期待される補完製品の価格を踏まえて、上記のサブスクリプション価格よりも、より低く設定することも可能となります。
②Competitor(競合製品):「いくらで売られているのか?」
価格設定に際しては、競合製品・サービスの価格を参考にする必要があります。
注意点としては、競合製品は同業他社の製品・サービスだけではないということです。狭義の競合企業にしか目が行き届かない「マーケティング近視眼」に陥らないように注意する必要があります。例えば、映画などの動画配信の1カ月の料金を決める場合、同業他社の動画配信サービスのみならず、映画館で映画を観る時のチケット料金、レンタルDVDのレンタル料金などが参考になると思います。
また自社の製品・サービスの強み、弱みも勘案されるべきです。例えば...