宣伝会議は「インターネット・マーケティングフォーラム2019」を、6月4日、5日の2日間にわたってANAインターコンチネンタルホテル東京にて開催した。今年で13回目の開催となる同フォーラムのテーマは、「想像と創造から生まれる顧客基点のバリューチェーン」。インターネットの新たな活用可能性が広がる中で、マーケターはバリューチェーンの川上まで視野に入れた“広義のマーケティング”が求められるようになってきている。本号では注目企業の講演から、今日的なインターネット活用アイデアと実践方法を紹介する。
集中できる空間だからこそ記憶に残るタクシーサイネージの広告
IRIS×メルセデス・ベンツ日本
「徹底検証!タクシー動画広告を活用したメルセデス・ベンツ C-Classのマーケティング戦略」というテーマで、新世代デジタルサイネージの開発と広告の販売を手掛けるIRISの飽浦尚氏とメルセデス・ベンツ日本の津止久雄氏がパネルディスカッションを行った。
プレミアムカー5年連続販売台数No.1であるメルセデス・ベンツのC-Class。津止氏は「当社の顧客は既納客が約半数、50代以上のお客さまが多い状況。そのため40代以下の新規獲得を目的に『C-Class1day試乗キャンペーン』を実施。これはWeb申し込みをした方がC-Classの1日オーナーになれるというもの。その広告施策としてタクシーデジタルサイネージの『Tokyo Prime』を活用した」と説明した。
「Tokyo Prime」は全国10カ所の都市を走るタクシー1万台にデジタルサイネージを装着、広告を配信している。飽浦氏は今回採用された理由を「タクシーに乗車する人は可処分所得が高い」とC-Classの広告と親和性がある環境であったことを指摘する。
5週間連続で広告掲載した結果、「延べで500万人にリーチ。ユニークのリーチは推定になるが350万人。ビジネスパーソンと富裕層を中心にリーチした」と飽浦氏。
今後、「Tokyo Prime」は全国10都市のデジタルサイネージタクシーの台数を拡大していく。2019年は1万台から2万台へ、来年以降は4万台~5万台程度にしていく予定だ。「5万台になると述べのリーチ人数が3500万人になる。ビジネスマンや富裕層を我々のメディアのみでカバーできる」と展望を示した。
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パーソナライゼーションを実現する「Acqia Lift」デジタル体験の向上が最重要課題になる
アクイアジャパン
アクイアジャパンの上田善行氏は冒頭でインターネット環境の変化に触れながら、現在とこれからのデジタル体験がオムニチャネル化し、デバイスを問わないパーソナライズされたものになっていくと指摘。そして「多くの企業は、デジタル体験の向上が最重要課題だと認識している。当社はそれを支援する会社」だと話し、2007年に創立されたアクイアの事業について解説した。
すでに国内外で多くの企業が同社のサービスを導入しているが、そのテクノロジーの中核にあるのが「Drupal」というオープンソースプロジェクトであると話した。
後半では、同社の岸俊兵氏がアクイアのサービス導入企業である全米3位のハンバーガーレストランチェーン「ウェンディーズ」の事例を紹介。ウェンディーズは「Acquia Lift(アクイアリフト)」によって、わずか88日間という短期間でパーソナライズされたデジタル体験を実現し、3500万ドルの売り上げ増加や年間のユニークユーザー数20%アップなどを実現している。
ウェンディーズが抱えていたコンテンツの統合、顧客やマーケティングのデータ管理、パーソナライズされた体験の提供といった課題は、多くの企業で共通しているものだと岸氏は指摘。「Acquia Lift」は、コンテンツの同期、プロファイルデータの管理と顧客に対するパーソナライズを一貫したアプローチによって実現できる。
最後に岸氏は、ウェンディーズで行ったフライドポテト好きの人を対象に行ったキャンペーンをモデルに、「Acquia Lift」のデモンストレーションで手順を追って見せ、その操作性の高さと簡易性を紹介した。
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高精度・高確率のビジネスを実現するためにはデータの資産価値を高めていく思考が必要
アユダンテ
デジタルマーケティングのコンサルティングや、近年はソフトウェアサービスも手がけるアユダンテの山浦直宏氏がGoogle マーケティングプラットフォームの活用について解説した。Google マーケティングプラットフォームは、Googleが提供してきたマーケティングツールを統合し、プラットフォーム化することでより高い精度と確率でビジネスを支援するためのものだ。
山浦氏は「皆さんの企業で蓄積しているデータは、効果測定のためだけにあるのではなく資産です。その価値をどう高めるかという考え方を持ってほしい。データを広く、深く取得することで、よりビジネスの成功をより精度と確率高く実現できる」と指摘した。
企業がデジタルマーケティングをプラットフォーム化するためには「ユーザー軸、ツール軸、組織軸モデルという3つの視点をセットで考えなければ、データの価値を高めてもビジネスの成果につなげることは難しい。また、マーケティングは自社だけで完結するものばかりではない。プラットフォーム全体を俯瞰でとらえ、単独で組織の連携が難しい場合は、テクノロジーとビジネスをつなぐエキスパート集団である当社のようなパートナーもうまく活用してほしい」と話した。
また、同社の支援により構築したGoogleアナリティクス360を活用したプラットフォームを用い、デジタルマーケティングに成功した富士フイルムの事例や、動画広告アトリビューション分析支援により広告接触の獲得効率を最大130%引き上げることができたソフトバンクの事例を通じて、アユダンテが提供する様々なソリューションが紹介された。
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キュレーションアプリの展開から見えてきたブランディング施策を継続するための5つのポイント
グライダーアソシエイツ
キュレーションアプリ「antenna*」を展開するグライダーアソシエイツの荒川徹氏は、antenna*の利活用が進むなかで「OOHや出版、Web、イベントなどをトータルで企画、あるいは広告会社のサポートをする会社に事業領域イメージが変貌しつつある」と話した。こうした役割を果たしながら同社が気づいた、多くの企業が抱える課題と、その対策を5つのポイントとして紹介した。
まずは、ブランドやプロジェクトの目的を明確にすること。荒川氏は「初歩的なこと」としつつも、最初の企画書やKPI/KGIなどに立ち戻ることによって必要な施策を洗い出すことが重要だと指摘した。
次に、企画、制作、流通のバランスを取ること。消費者が受け取るコンテンツが多様化しているからこそ、企画を実行するだけではなく、その情報があらゆるメディアに展開し、広まっていくことを重視すべきだと話し、同社が提供しているテレビ・ラジオ番組の記事をWebで配信することで拡散させるスキームなども紹介した。3つ目は左脳と右脳のバランス。データだけを指標としていると均質化し、独自性を失う恐れがあると指摘。ここでは「ROO(Return On Objectives)/目的対効果」という指標についても紹介した。
4つ目は「既存施策を見直す・視点を少し変える」。荒川氏は「既存の知と新しい視点の知を組み合わせることに多くの企業が注目している」と話した。5つ目のポイントでは既存顧客と新規顧客を両輪で考えることを挙げた。荒川氏は「企業の悩みに伴走できるようなパートナーとしてantenna*をはじめ、各種施策を用意している。ぜひ、ご相談ください」とまとめた。
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株式会社グライダーアソシエイツ 総合企画局
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現役インフルエンサーが語る若者に刺さるコンテンツのつくり方
GROVE
インフルエンサーを活用したマーケティングを進めるGROVEの太齊佑介氏が、同社に所属するインフルエンサー、なえなの氏、たくみなかう氏とふてこ氏を招いたパネルディスカッションを通じ、若者がいかにソーシャルメディアと向き合い、情報を発信しているのかを明らかにした。
今の若者はソーシャルメディアを生活の一部として自然に利用しており、フォロワーが増え、インフルエンサーと呼ばれるレベルになると、発信することに責任も感じ始めるという。しかし、使い方に関しては、一般のユーザーとインフルエンサーの間に大きな差はなく、情報源もそれぞれが頻度高く利用するアプリに求めるという点でも代わりはない。ただ、「速報性のあるニュースなどはTwitter」(たくみなかう氏)と話すように、アプリ毎の強みは直感的に判断している。
コンテンツ投稿のコツについてなえなの氏は、「Instagramは自撮りよりも他人に撮ってもらった方が"いいね"の数が圧倒的に違う」と話す。アプリの表示形式に合わせた見せ方や、生活サイクルを意識した投稿時間などの工夫にも言及した。
太齊氏の「印象に残ったプロモーションは何か」というに質問にふてこ氏は「マクドナルドの#ティロリチューン」などを挙げ、TikTokでは「音楽が頭に残ることは大事」だと話した。なえなの氏からはインスタグラムではカルーセルで静画と動画を組み合わせるとコメントが伸びるという指摘も出た。
パネルディスカッションを通じて、ソーシャルメディアを活用したプロモーションの成功は、各アプリの特徴を生かした投稿に鍵があることを感じさせるセッションとなった。
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進むARのマーケティング活用 1700社超の事例から課題に最適な施策を提案
スターティアラボ
スターティアラボは、マーケティングへのAR活用を2010年から推進してきた。
ARは、位置情報と組み合わせた、「GPS型」、何もないテーブル上にカップや花瓶を出現させる「空間認識型」、画像を認識してその上に表現を重ねる「マーカー型」の3種類に分類される。
とくにマーカー型は配布物の強化に向いており、同社が手がけた事例では、菓子のおまけにつけた初音ミクのトレーディングカードにアプリをかざすと、楽曲が聴ける仕組みにした。カードは7種類で、楽曲がそれぞれ異なるため、SNS上では全種類収集するための情報が行き交い、売上も伸びた。
マーカー型ARとGPSを組み合わせたKADOKAWA電撃文庫25周年記念イベントのARスタンプラリーには、数千人が参加。平均コンプリート率74%、景品交換率98%という成果を上げた。
同社は、これまでAR活用の障壁だった、アプリをダウンロードする手間を、逆転の発想で、わざわざアプリをダウンロードするようなコアなユーザーをあぶりだす仕組みと捉えた。また、「WebAR」という、アプリ不要でブラウザだけでARを使える技術を独自開発し、広く一般的に使ってもらうことも可能になった。現在は1700社を超える企業がマーケティングに同社の無料アプリを導入し、アプリは総計で280万ダウンロードされている。
同社の小友康広氏は、「AR業界は、特にEC、ハードウェア、広告、エンタープライズ向けの市場が伸びて、5年以内に9兆円産業に成長すると予測されている」と話した。
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