宣伝会議は「インターネット・マーケティングフォーラム2019」を、6月4日、5日の2日間にわたってANAインターコンチネンタルホテル東京にて開催した。今年で13回目の開催となる同フォーラムのテーマは、「想像と創造から生まれる顧客基点のバリューチェーン」。インターネットの新たな活用可能性が広がる中で、マーケターはバリューチェーンの川上まで視野に入れた”広義のマーケティング”が求められるようになってきている。本号では注目企業の講演から、今日的なインターネット活用アイデアと実践方法を紹介する。
「音楽」というパーソナルな環境が効果を生む新しいコミュニケーション「デジタル音声広告」
スポティファイジャパン
2008年、スウェーデンでスタートした「Spotify」。現在、79カ国で展開し、定額制で利用する2億1700万人のアクティブユーザーと、無料で楽しめるが楽曲の合間に広告が入る1億1700万人のフリーユーザーを抱える。
スポティファイが注力しているのが「デジタル音声広告」だ。ユーザーから集めた1000億ポイントのデータを活用し、ユーザーが聴いている音楽から、通勤や食事やランニングといった生活シーンや、家族構成などを予測し、最適な広告を投下する。デジタル音声広告市場は、グローバルで2017年度は前年上半期比32%増、2018年度も前年上半期比31%増というスピードで成長している(出典:IAB 2018年)。
日本では2年前からサービスを開始し、都市部を中心にユーザーが拡大中だ。日本のユーザーの特徴は、その多くがデバイスとしてスマートフォンを使い、さらに85%がヘッドフォンで音楽を聴いている点だ(出典:ニールセンメディアラボ 2017年)。スポティファイジャパンで広告事業を統括する藤井哲尚氏によると、ラジオCMと違い、デジタル音声広告は30秒と短いうえ、パーソナルな没入感があるため、96%以上の人がスキップせずに最後まで聞くという。
没入感のある環境でのブランドコミュニケーション効果は高く、大手消費財メーカーの事例では、ブランド認知が47ポイント、ブランド好意度は36.9ポイント、ブランド利用意向は33.4ポイント向上した(出典:マクロミル 2019年)。
同社は今年、デジタル音声広告への理解促進と市場拡大を目的に、広告主と共に音声広告について考える「デジタル音声広告クリエイティブラボ」を宣伝会議と発足、メンバーを募っている。
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高速大容量・低遅延・多接続の5G時代を見据えた新たな動画コミュニケーション「ビデオリリース」
NewsTV
2020年に本格運用、2023年には全国普及すると言われる5G。2018年に1800億円だったインターネット広告は、2024年には2.3兆円に伸びる見込みだ。2時間の映画のダウンロードが3秒で完了し、パケットの定額料も限りなく無料に近くなり、いつでもどこでもスマホで動画を見ることができる時代が来る。
こうした環境の変化の中で、動画によるコミュニケーションはますます重要になると、NewsTVの杉浦健太氏は話す。
同社は5G時代を先取りした「ビデオリリース」という、記者発表会、PRイベント、展示会や新商品情報などを無料で動画化し、独自の広告配信プラットフォーム『NewsTVNetwork』やSNSなどを活用して配信する新しいフォーマットを完成させた。これまでは、リリースや記者発表会がメディアに取り上げられることで情報が流通していたが、ビデオリリースはメディアを介さずにターゲットのスマホに直接配信できる。
同社は、これまでに制作した2000本を越える動画について1秒ごとの離脱データを分析することで、効果が上がる動画のパターンと効果がマイナスになる動画のパターンを解明。効果が上がる「勝ちパターン動画」を制作することができる。また、ビデオリリースは動画制作費が無料なので予算を配信費に充てることができ、多くのターゲットへの配信が叶う。
この「勝ちパターン動画」をターゲットに直接配信できることで効率よく成果を上げることが可能なため、同社にビデオリリース制作を依頼する企業が急増しているという。
杉浦氏は「フルファネルで動画を活用する未来がきている」と述べ、本セミナーを締めくくった。
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アフィリエイト業界の闇に切り込み業界の健全化を模索する、生中継トークセッション
フォースリー×popIn×グライダーアソシエイツ
2019年5月、NHKはネット広告の闇を追跡する番組を放送してWebメディアのコンテンツモラルを指摘した。実際にインターネット広告業界にはどのような闇があるのか。また、正しい情報をユーザーに届けるにはどうすればよいのか。フォースリーの林勇輝氏と有國成晃氏、グライダーアソシエイツの山口翔氏、popInの金谷徹氏が、業界の闇に切り込み、健全化のための解決策を模索した。
ダイエット食品のビフォー・アフターの写真が明らかに別人である、許可なく有名タレントが使っているかのように謳っている、広告のためだけにInstagramのアカウントをつくるなど、ネット広告ではさまざまな不正が行われている。また、クライアント企業の担当者から、予算消化のためや、クリック数を前年比から下げないようにするために、暗にアドフラウドを活用するようにほのめかされた経験も明かされた。
登壇した3社とも、不正を発見するとすぐに掲載を中止する対策を講じているが、毎日配信される膨大な量の広告をすべてチェックすることは難しいのが実情。「アフィリエイト広告のすべてが悪いわけではない」と山口氏。有國氏は「アフィリエイトというビジネスモデル自体は混沌とする現在の広告業界においては実に合理的で、環境整備役として手を挙げるプレイヤーがこれまで出てこなかった」と同社が開発した広告掲載面の監視ツール「LOGRIZa(ログリザ)」を紹介した。
インターネット広告が信頼を得るには、処理/解明できなかったことが実現される技術開発のみでなく、並行してステークホルダーのモラル/リテラシーの成長が必要。技術革新と比較してモラルコンテンツの成長の遅れを指摘し、体質変化が必要であると訴えた。
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プログラミング不要でデータ活用が可能に?データマーケティング革命の「b→dash Data Palette」
b→dash(フロムスクラッチ)
データマーケティングで業績が伸びている会社と伸びなかった会社の差はどこにあるのか。b→dash(フロムスクラッチ)の三浦將太氏は、マーケティングツールを導入している10業界144社を調査。そこから、導入後に業績を伸ばした15社と伸びなかった15社を抽出してインタビュー調査を実施し、その差を生む要因が、データ量やリテラシーといった要因ではなく、「マーケターの時間の使い方」にあるとつきとめた。
業績が伸びなかった企業のマーケターは、業務時間の約65%をデータ統合や変換処理などの「データ準備」に使い、実際にデータをもとに施策実行や分析をする「データ活用」に充てる時間は約35%と短かった。一方、業績を伸ばした企業のマーケターは、データ活用に約70%もの時間を充てることができていた。
三浦氏は、マーケターが「準備」に時間をとられてしまう理由は、データ準備の工数の煩雑さにあると話す。データを活用できる状態にするには、クレンジングや統合作業など、1回の施策あたり380時間もの工数が必要になる。しかも準備にはプログラミングなど専門知識が必要だ。つまり、データマーケティングで成果を上げることができるのは、データに特化した人材を多く抱える企業か、外部のSIerなどに委託できる予算が潤沢な企業ということになる。
しかし三浦氏は、テクノロジーによって、誰でも自由にデータを扱える時代が来たと話し、その一例として同社の新技術「Data Palette(データパレット)」を紹介した。Data Paletteは、簡単な画面操作だけで380時間かかっていたデータ準備の工数を約5時間に短縮した実績もある。結果的にマーケターは企画立案と実行に時間を割けるようになり、導入企業の事業売上が約40%向上した事例などが紹介された。
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自社アプリは「手のひらのなかの一等地」 生活者とつながるアプリ運用をサポートするヤプリ
ヤプリ
プログラミング不要でモバイル戦略を成功させるアプリプラットフォームを提供するヤプリの島袋孝一氏が、生活者起点のメディアプランニングと、メディアとしてのアプリの有効性について話した。
パソコンとスマートフォンの登場以降、消費者のメディアとの接点は、かつての4マスメディアからデジタルメディアにシフトし、その接触時間も同様にシフトしている。島袋氏はさらに、デジタルのなかでもアプリとWebでは月間の接触時間がアプリの方が約20倍長いというデータを紹介し、「生活者視点のコミュニケーションを実現するためにアプリは非常に有効」と指摘する。
島袋氏はまた、プロモーションで活用するペイド、オウンド、アーンドのトリプルメディアについても解説し、オウンドメディアは既存顧客との接点強化に有効であり、そのひとつの選択肢がアプリだと話した。ここで同社の支援によって自社アプリを導入し、成果を上げているSHIBUYA109やライトオン、PRONTOなどの事例を紹介。
業種業態を問わず、多くの企業がさまざまな目的で自社アプリを導入し、成果を上げている。ソーシャルをはじめ、多くのデジタルメディアがあるなかで、なぜ自社アプリが必要なのかについて、ニューバランス ジャパンの鈴木健氏の言葉を引用しながら「アプリは、ブランド旗艦店がある銀座や原宿のような手のひらのなかの一等地」だと表現しその意義を説明。「トレンドを取り入れている企業は、さまざまなメディアを併用しながら、お客さまと直接つながるために自社アプリを運用している」と話した。
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リアルの場にある「熱量」をオンラインへ 拡散するTwitterキャンペーンを設計するには?
ユニークビジョン
SNSマーケティングツール「Beluga」シリーズで企業のソーシャルメディア運用を支援するユニークビジョンの白圡良之氏が、Twitter Japanの張浩氏と北野達也氏をゲストにパネルディスカッションを行った。
冒頭、白圡氏はTwitterを「パブリックとプライベートを自由に行き来しながら、ユーザーとのコミュニケーションを図ることができる唯一のプラットフォーム」と表現。Belugaシリーズを利用したTwitterキャンペーンのバリエーションと有効性を紹介した。
パネルディスカッションでは、張氏がeスポーツの世界大会「EVO Japan 2019」や、2019年4月1日の新元号発表前後に実施したTwitterキャンペーンを、北野氏は北海道日本ハムファイターズがTwitterを活用し、球場内外でファンと球団の関係を築いている事例を紹介した。
スポーツやゲームの試合会場、あるいは改元などのイベントで、リアルの場にある「熱量」をオンラインへ広めるためにどんなことをしているのかという白圡氏の問いに対し、張氏は「質問系の投稿を起点にすることで、自然にユーザー間で会話が広がるようにしている」と回答。北野氏は「いかに"WANT"を引き出すか。ユーザーの欲求を引き出し、そこを満たすようなキャンペーン設計が重要」と指摘した。
白圡氏は最後に、「ツールありきではなく、マーケティングの目的を明確にしてツールの特徴とうまく融合させることが成功の鍵。現代のマーケティングはターゲットを参加させるのではなく、巻き込んで一緒に何かつくり上げること。それが一番実現しやすいのがTwitter」と話した。
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