宣伝会議は「インターネット・マーケティングフォーラム2019」を、6月4日、5日の2日間にわたってANAインターコンチネンタルホテル東京にて開催した。今年で13回目の開催となる同フォーラムのテーマは、「想像と創造から生まれる顧客基点のバリューチェーン」。インターネットの新たな活用可能性が広がる中で、マーケターはバリューチェーンの川上まで視野に入れた"広義のマーケティング"が求められるようになってきている。本号では注目企業の講演から、今日的なインターネット活用アイデアと実践方法を紹介する。

(写真左から)マリモレコーズ 専務取締役の江夏由洋氏、同 代表取締役の江夏正晃氏、インタラクションデザイナー/映像演出家の中田拓馬氏、日本HP パーソナルシステムズ事業本部パーソナルシステムズ・マーケティング部 部長の甲斐博一氏。
現役高校生とクリエイターがAI×クリエイティブを語る
テクノロジーを駆使して、巨匠モーツァルトを現代に蘇らせるプロジェクトに、現役高校生とトップクリエイターが挑戦した。プロデュースするのは日本HPだ。同社は革新的な製品とソリューションを軸にPC・プリンティング事業に最適化した事業基盤を構築。2019年第1四半期では単独ブランドでマーケットシェアトップを独走している。
会場内では、AIがつくり出すモーツァルトの新曲に8K映像とイマーシブオーディオを融合させたプロジェクト(「Project Z」)の制作現場をまとめた動画を披露。日本HPの甲斐博一氏は講演の中で、プロジェクトの概要や制作意義などを語った。
「私たちの3つのパーパス、①テクノロジーで人々を豊かにすること、②驚くような体験を日々創造すること、③次世代へ繋ぐこと、がプロジェクトに込められている」(甲斐氏)。
制作にあたっては、高校生たちが4グループに分かれ、ディープラーニングのレクチャーを受けながらAIにモーツァルトの音楽を学習させ、楽曲を制作。複数の候補から優れた旋律を選び、クリエイターが楽曲に仕上げて編曲、レコーディング。さらにイマーシブサウンド(3次元音響)と8K映像(超高精細映像)、リアルタイムレンダリングを組み合わせて、かつてない映像体験を実現した。楽曲は今後、アルバムとしてリリースしていく予定だ。
講演後半は甲斐氏をモデレーターに、音楽家の江夏正晃氏、映像プロデュース江夏由洋氏、映像演出の中田拓馬氏。高校生代表(3名)を交えたディスカッションが行われた。
「AIがつくったメロディを音楽に仕上げていくという仕事は刺激的だった。12個のスピーカーで設計したイマーシブオーディオによる、地面からせり上がるような365度方向から出力されるサウンドをぜひ体験してもらいたい」(江夏氏)。「コンピューターは私たちにとって、やりたいことを拡張してくれるもの。アイデアを実現するために欠かせないツール」(中田氏)、と制作の舞台裏を紹介した。
高校生からは、「AIを導入したら、あとは勝手にやってくれるものと思っていたが、人間が沢山の手を加えたりしなければ成り立たないと知ることができた」、「もっとテクノロジーを使って生活を豊かにできるようになりたい」、「今の日本人は、上を目指す熱意が足りない。リスクをとっても新しいことに挑戦できれば、海外にも十分に対抗できるのではないか」など未来につながる熱いコメントが寄せられた。
最後に甲斐氏は、「マーケティングは人に興味を持つことが前提にある。人の気持ちと行動を観察し、そこからインサイトを得て、売れる仕組みをつくることが第一義。スマホやPCの2次元の画面上だけではなく、3次元空間をいかにパーソナライズしていくかがマーケターの課題となったいま、その課題解決を実現できるプラットフォームを提供していきたい」と締め括った。

お問い合わせ
株式会社 日本HP
E-mail:ws_jp_mktg@hp.com
『Tech & Device TV』
URL:https://www.techdevicetv.com/event/project_z/