メディアの変化、Z世代に代表される消費者行動の変化──、めまぐるしい変化の時代を迎え、広告を取り巻く産業構造そのものにも、変革の兆しが見えている。広告産業は、今後日本企業の競争力を高めるためにどう貢献できるのか。日本のコンテンツ産業やそれを取り巻く広告業・印刷業などの発達・改善に携わる、経済産業省 高木美香氏に聞いた。
ダイレクト課金の事業構造へ 「広告費」はどこに行く?
「日本のコンテンツ産業は、長年、広告収益モデルを中心に発展してきました。一方で、グローバルなITプラットフォーマ―の台頭や、ダイレクト課金をいとわない消費者心理の変化を受けて、企業の『広告費』の使い道も変わりつつあります」と語るのは、日本のコンテンツ産業の国際取引活性化や新市場創出、それを取り巻く広告業などの発展を支援する、経済産業省 商務情報政策局 コンテンツ産業課課長の高木美香氏。
テレビ全盛期の時代から、広告スポンサーに支えられた無料コンテンツを楽しむのが、日本市場におけるコンテンツ消費の基本的なスタイルであった。しかし、近年はインターネット広告費が地上波テレビの広告費に迫る規模へと成長。「広告を見るよりも直接お金を払う」と考える消費者も増えている。コンテンツ産業界にとって、ダイレクト課金をいとわない消費者が増えていることは追い風でもある。
それでは、企業の「広告費」はどこに行くのだろうか?スマートスピーカーをはじめとするスマートホーム化が進むと、現在のインターネットの検索結果のように選択肢を一覧してから選ぶのではなく、AIによって最適なものを提案される暮らしが待っているかもしれない。とすると、あらゆるものがネットにつながればつながるほど、広告の入るスキマがなくなっていく可能性がある。こうした社会全体の変化も踏まえて高木氏が注目するのはコンテンツとの境目がない広告、「ブランデッドコンテンツ」だ …