商品の価値を考えるにあたり、商品自体を変えるのではなく、コミュニケーションによって新しい価値提案ができないか。また、それはどのように考えて行えばよいのかを、戦略からコミュニケーション全般の設計を手がける、GOの砥川直大氏に聞いた。

「キングダム」1巻から30巻をビジネス書風にデザインし、「今、一番売れてるビジネス書」として展開。
コモディティ化時代のコミュニケーションとは
昨年末、モノの付加価値について考えさせられる広告がありました。それは、幸楽苑の「二億円事件」です。働く人の気持ちを守りたいという社長の想いから、元日にほぼ全店を休業させるという内容の新聞広告は、大きな話題になりました。
私自身、(まずこの広告に嫉妬したことは言うまでもありませんが)、一気に幸楽苑が好きになり、いつか入ってみようと思う切っ掛けになりました。私の場合、仮に二億円かけてラーメンの宣伝をされても興味を持たなかっただろうと思うと、商品そのものではない、コミュニケーションによって付加価値を与えられたことを自覚した瞬間でした。
「コモディティ化」という言葉は、あまり良い意味で使われることはありませんが、消費者にとっては、失敗しないから「どれもでいい」という良い意味であり、だからこそ企業側には厳しい言葉になります。ただ、ポジティブな言い方をすれば、スペック以外の話ができるのです。
以前「Volvic」が実施した「1L for 10L」は、水の産地云々ではなく、その売上でアフリカに清潔で安全な水が届けられることを語り、それが売上につながりました。水ほどコモディティ化したものはなく、だからこそ、普段と変わらない行動で世界が少しでも良くなるのであればと多くの人が手に取りました。
この事例は商品を含めた仕組みではあるものの、商品そのものとは別の思想がそこにはあります。あらゆるモノが横並びの時代には、こうした思想やコンセプトこそが付加価値になり、それを伝えるコミュニケーションの役割はより重要になってきています …