体験が重視される時代の商品・サービス開発
「JAPAN as number one」……。戦後、高い技術力を背景に生み出されたプロダクトで、世界の市場を席巻した日本企業。しかし、デジタル化の進展によって、プロダクトの機能性だけでは価値を発揮しづらい環境が生まれている。デザイン・イノベーションを駆使し、UI・UX、プロダクト開発、ブランディングなどを行う田川欣哉氏に新しい時代の商品開発について話を聞いた。
機能を超える、価値をつくる!コモディティ時代の商品開発
多くの一般的なニーズは解決しつくされ、本人も無自覚な欲求の発見が重要になっている現代。新しい市場を開拓するためには、どのように考えていけばよいのか。マイノリティの人が抱える悩みを解決するブランドをつくり出しているハヤカワ五味氏と、インサイトの発見よって企業のサポートをしているデコムの大松孝弘氏が対談した。
ハヤカワ五味:私は胸が小さい人向けのランジェリーブランド「feast」や、細身の人向けのワンピースブランド「Double Chaca」などを手掛ける、ウツワという会社の代表をしています。ラフォーレ原宿で直営店を運営していて、ウツワは今年で5期目に入りました。夏からはアパレルだけでなく、生理用品の事業も始める予定です。
大松孝弘:人を動かす隠れた心理「インサイト」を明らかにすることを起点とする事業を展開するデコムという会社で、代表をしています。デコムでは商品、事業、プロモーションの課題を、インサイトで解決するというソリューションを提供しています。
ハヤカワ:言語化できていない欲望、インサイトを捉えることですかね。いまはSNSなどで、いろいろな人の声を目にする機会が増えています。しかし、そういった声の中でも、ニーズが表出しているものとそうでないものの2パターンありますよね。例えば「自分らしくいられる服が欲しい」と投稿しているけれど、実際にはその背後に「モテる服が欲しい」だったり、「自分の体型に合う服が欲しい」だったり言葉には出ていない深層心理があったりします。
大松:日本では1980年代後半頃に、おおむねの顕在化されたニーズは充たされたと考えてよいでしょう。そのため、日本市場における商品開発では、まだ顕在化していない欲望を見つけていかなければなりません。ハヤカワさんの言うように、消費者が口に出して発した言葉をそのまま受け止めてもダメ。
例えば、日本マクドナルドが消費者調査をしたところ「ヘルシーなメニューがあったらよい」という声があったので、「サラダマック」なる商品をつくってみたところ、不振に終わったという事例があります。消費者が口に出す要望と、実際の行動は違うことが多いのです。
確かにヘルシーな食事に対するニーズはあるでしょうし、消費者が嘘を言っているわけではありません。しかし...