日本全国を対象にマーケティングを行うにあたって、自身が住んでいる地域の基準だけで考えるとことには、リスクが伴う。全国で生活は均一化しつつも、地域によって異なる面は、いまだ残っている。本稿では、メディア環境研究所の「メディア定点調査」のデータをもとに、メディア接触の地域性について新美妙子氏が解説する。
メディア総接触時間の推移
スマホが生活に急速に浸透しつつある現在、メディア接触はどのように変化しているのでしょうか。メディア環境研究所の「メディア定点調査」を地域におけるメディア接触という観点から考察していきます。
「メディア定点調査」は年1回、東京・大阪・愛知・高知の4地区で行っています。調査を開始した2006年、ネットの利用状況には地域差がありました。高知は、ネット利用率が高い東京との差が大きかったため、地方代表として観測し続けています。まず初めにメディア接触時間の時系列推移を見ていきます。
2018年のメディア総接触時間(1日あたり/週平均)は、東京396.0分、大阪404.9分、愛知396.8分、高知383.5分でした(図表1)。調査開始時と比べると、全地区60分程度伸びています。

図表1 メディア総接触時間(時系列推移)
※2014年より「タブレット端末」を追加。「パソコンからインターネット」を「パソコン」に、「携帯電話(スマートフォンを含む)からのインターネット」を「携帯電話(スマートフォンを含む)」に変更
※メディア総接触時間は、各メディア接触者の接触時間の合計
メディア別に見ると、携帯/スマホの伸長が顕著で、高知を除く3地区で初めて100分台になりました。愛知(2010年から調査)以外の携帯/スマホの接触時間は10年余で8~9倍に増加し、メディア環境が急速に変化している様子が伺えます。
2006年の携帯(携帯/スマホは2013年まで携帯として調査)の接触時間は10分程度でしたが(愛知を除く)、スマホ所有率の伸長に伴って差が拡大しました。高知のスマホ所有率は2013年頃までは東京の1年遅れ、それ以降は2~3年遅れで推移しており、携帯/スマホの接触時間の伸びも同様の傾向を示しています。2018年、高知のスマホ所有率は67.0%になり、他の地区(東京79.4%、大阪75.8%、愛知78.0%)と差が縮まりつつあります。
地域で際立つテレビの存在感
2018年、東京のメディア総接触時間は396.0分と過去最高になりましたが、大阪のメディア総接触時間は全地区の中で最も高く、近年400分台で推移しています。大阪の携帯/スマホの接触時間は東京と同程度ですが、東京に比べてテレビの接触時間が長く、2006年から僅か10分弱の減少に留まっています。
次に2018年のメディア総接触時間の構成比を見てみると、大阪のテレビの接触時間のシェアは東京より約5ポイント高くなっています(東京36.4%、大阪41.1%、愛知40.3%、高知45.5%)(図表2)。また、テレビのシェアが最も高い高知は東京より9ポイント強高く、テレビの存在感があることがわかります。テレビは全メディアの中で接触時間が最も長く、最もシェアが高いメディアであることは全地区共通です。
加速するモバイルシフト
メディア接触のデジタル化の進展をモバイルシフトに着目して見ていきます。2018年、東京はパソコン・タブレット・携帯/スマホのデジタルメディアのシェアが50.4%と初めて過半数に達しました。その内、タブレット・携帯/スマホのモバイルのシェアは33.6%。初めて全体の3分の1を超えました。
大阪のデジタルメディアのシェアは44.2%、その内モバイルのシェアは31.2%。愛知はデジタルメディアのシェアが44.7%、その内モバイルのシェアが32.6%と大阪と似た傾向です。高知のデジタルメディアのシェアは39.5%、その内モバイルが27.0%です …