急激に利用が拡大しているショートムービーアプリ「TikTok」。そのユーザー層は若年層に留まらず広がっており、プラットフォームとしての可能性を広げている。クライアント課題解決の専門チームも設立され、メディアサービスを超えたマーケティングソリューションを提供する企業としての存在感を示す、TikTokの現状、展望を聞いた。
独自のレコメンドエンジンでユーザーの興味関心を引く
国内で950万MAU(2018年第4Q)を誇る「TikTok」など、さまざまなアプリを展開するByteDance。特に2018年からテレビCMの放映も開始した「TikTok」は、ユーザーが簡単に動画を加工・編集、さらに投稿できる点が魅力。TikTokでは機能のユニークさ、操作の簡単さからユーザー制作のコンテンツが多く投稿され、新たなトレンドを生み出している。
ユーザーからの支持の原動力になるのがByteDanceの技術力だ。独自のレコメンドエンジンにより、ユーザーにとって、新しいエクスペリエンスを提供している。
中高生を中心にユーザーを獲得しているというイメージも強いTikTokだが、「最近はその世代に加えて高年齢層のユーザーも増えている」と同社の鈴木瑛氏は話す。
「現在、"ダイバーシティ"をテーマに、ユーザー層、コンテンツの幅を広げるためのプロモーションを展開しています。その結果、今までのユーザーよりも上の世代が増え、さらに投稿コンテンツにも、これまでとは異なる傾向が見えてきています」という。ユーザー層、そしてコンテンツが多様化を始めたTikTokには、広告プラットフォームとしての期待も高まっている。
企業やブランドの課題を解決する専門のチームを設立
多くのユーザーを抱えるプラットフォーマーである同社には、さまざまな企業からの相談がくる。こうした依頼の増加に対応し、同社では企業やブランドの課題を解決するための専門チームを設立した。鈴木氏が率いる"X Design Center"だ。
「認知やブランドイメージの向上、機能伝達、来店や購買への寄与など、マーケティング活動の目標設定は、複雑化しています。こうした多様化する目標に応えられるような、たったひとつの正解はないと考えていますし、時にひとつのメディアだけでは解決できないこともあります。TikTok上のプロモーションしか提案しない我田引水の解決策ではなく、企業やブランドの立場に立った包括的なマーケティング戦略の企画・実行をサポートする必要があるとの考えから、このチームが立ち上がりました」と鈴木氏は話す。
X Design Centerでは、各領域のプロフェッショナルを集め、統合コミュニケーション/デジタルコミュニケーションの設計・制作を一気通貫して対応できる体制を構築。戦略の提案から制作までのすべてのフェーズにおいてサポートが可能になっている。複雑な課題を解決するためには、マーケティング、クリエイティブ、オペレーションなどさまざまなファンクションを備えたチームが必要だと判断しての体制だ。
チームの役割は、ずばり「ベストプラクティスをつくること」。TikTokを用いたクリエイティブはもちろん、テレビCMや他のデジタルメディアなどを交えた、多種多様な課題に応じたプランニングから実制作までend to endのサービスを提供できることが強みだ。
広告かコンテンツかは関係ない 高エンゲージメントが出る理由
TikTokでエンゲージメントを深められるコミュニケーションについて、鈴木氏は、「TikTokユーザーにとって、発信主体が企業だろうと、そうでなかろうと関係がありません。自分たちが共感できるコンテンツかどうかが判断基準で、共感できるものであれば、それが企業の広告であっても自然と受け入れてくれる。そういったユーザーが増えていると思います」。実際に、広告であってもポジティブなコメントが多く、エンゲージメント率が高いのが特徴だと話す。
例えば、ブランドリフトを目的とした江崎グリコの事例は、ユーザーのエンゲージメント向上に寄与したケースだ。
江崎グリコでは11月11日の「ポッキー&プリッツの日」を、さらに盛り上げるため、TikTokを活用。このキャンペーンでは、ユーザーに「#ポッキー何本分体操」というテーマで動画投稿を促すオフィシャルの「ハッシュタグチャレンジ」を実施した。(図表1)
「結果としては、11月6日~10日のキャンペーン期間に、数万の動画投稿数と、数千万の動画再生数を記録するなど、驚くほど高いブランドエンゲージメントを確認できました」と話す。
TikTokは、ユーザーと深いエンゲージメントを創り出し、ブランドスコアを押し上げることが統計的に確認されているという。投稿して終わりではなく、事後にブランドリフト調査を実施し、ブランドへの影響を確認する、レポーティングに力を入れるのもByteDanceのこだわりだ。
踊るだけではない新しい使われ方が文化を生み出す
新しい楽しみ方、トレンドが次々と生まれているTikTok。
「投稿される動画は、自身を撮るインカメラから周りを撮るアウトカメラにも広がり、さまざまなジャンルのコンテンツが生まれています。」
それらコンテンツの変遷は、四象限の図(図表2)としてまとめられている。図表からはメイクのHow to、旅の風景、料理、ペット、子どもを撮影するなど、多様な使われ方をし始めていることが良くわかる。
そういった変化の中、クライアントへ提供するソリューションについての可能性も広がっている。
鈴木氏は「TikTokでは今日も新しい文化が生まれています、私たちはそのヒントをキャッチし続け、従来の広告のフォーマットにはとらわれない提案を行い、TikTokユーザーとのエンゲージを深め、ブランドリフトに貢献できる。TikTokという新たな熱狂の場を、企業のマーケティング活動に活用してもらえるサポートに全身全霊をかけてコミットしていきたい」と今後の展望を語った。
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