人々の心を揺さぶり、行動を喚起することを目的とする「広告」。まだ誰も見たことがない新しい表現を通じて、自社ブランドの魅力を強烈に訴求することを求められるインハウスクリエイターは、日々、どのような物事からインスピレーションを得ているのでしょうか。資生堂 クリエイティブ本部の小助川雅人氏が、「広告」の枠組みにとらわれず「気になった」ものを毎回セレクトし、クリエイティブワークに生かせそうなポイントを考察します。
今年の米国アカデミー賞では、Netfixのオリジナル映画、アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA』が監督賞を受賞した。
『ROMA』とはイタリアとは関係なく、キュアロン監督が少年時代を過ごしたメキシコのある地区の名称である。主人公は、裕福な白人家庭に勤める家政婦。主演の女優は一般のオーディションから選ばれた素人だ。全編がモノクロで撮影され、話される言葉はスペイン語。Netfixで見る人は当然、字幕で見ることになる。エンディングも一見淡々としており、わかりやすいどんでん返しもない。つまり「バズる」要素が全くないのだ …
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