急速に開発・浸透が進むAIは、多くの企業で導入・活用の道が模索されています。AI活用のメリットが多く指摘される一方、世界的にもAIによる事件が起きています。2月に出版された『悪のAI論』の著者・平和博氏にAIの抱える問題点や、企業が持つべき意識を聞きました。
POINT
POINT 1 ▶ ルールづくりを進めるだけでなく、一人ひとりのリテラシー向上が必要。
POINT 2 ▶ 「AIの判断なら正しい」と思い込み、依存をしない。
POINT 3 ▶ AIに学習させるデータに歪みはないか、人間がAIを「監督」すること。
AIに生活を任せられるか?歪んだデータで歪んだAIができる
デジタルテクノロジーの発展と共に、進化を続けているAI。AIはスマートフォン、スマートスピーカー、家電製品など、私たちの暮らしのあらゆる場面に浸透してきている。さらには就職の採用選考やローン審査、信用度スコアの評価、自動運転車や兵器、防犯用の監視カメラ、広告、選挙……AIは社会に大きな変化をもたらしてきた。
身近な存在になりつつあるAIだが、そのAIに社会や暮らしを任せられるか。どれほどAIのことが私たちに分かっているか。そう問いかけるのが朝日新聞社 IT専門記者(デジタルウォッチャー)の平和博氏だ。平氏は、AIが浸透してくるにあたり、AIが本当に公正・中立であり、安全性を持っているか。かつ信頼できるのかを考えるべきと話す。
「AIを動かし、判断の基準となっているのはデータです。AIが正確な判断を示すには、まずAIが読み込むデータが正確であることが求められます。例えば、最近では厚生労働省の統計不正が問題となりました。データに誤りがあったり、ある意図によってデータが改ざんできるとすると、そのデータをもとにしたAIの判断は、正確と言えるでしょうか。そしてその判断を信用できるか、ということを一度考えていただきたいのです」。
さらに平氏は、たとえデータの改ざんがされていないとしても、そのデータが中立で公正なものか、という点を懸念する …