個人の委託を受けて、個々人のパーソナルデータの管理を行う「情報銀行」の実現に向けた制度や環境整備が進んでいます。特に消費者の理解が不可欠な「情報銀行」を始め、パーソナルデータの利活用について日本人はどのような意識を持っているのでしょうか。野村総合研究所の安増拓見氏が解説します。
POINT
POINT 1 ▶ 個人データを収集・管理し、個人に代わって企業などの第三者へも提供する「情報銀行」が日本でも始動へ。
POINT 2 ▶ 「情報銀行」の具体的な利用法や自身へのメリットを示した場合、利用意向は向上。
POINT 3 ▶ 個人がパーソナルデータを管理することについて消費者の理解を促すことが、「情報銀行」運用の鍵。
"個人"がパーソナルデータを管理するための「情報銀行」
個人データを収集・管理し、個人に代わって企業などの第三者へも提供する「情報銀行」が、日本でも本格的に動き出そうとしている。2018年10月には総務省と日本IT団体連盟が「情報銀行認定」に関する説明会を開催し、同年12月より認定申請の受付を開始。2019年3月より事業者認定を受けた第一号が誕生する予定だ。
近年、企業や公的機関におけるパーソナルデータ活用が進むと同時に「自分のデータがどこでどのように活用されているのか、個人が把握したり管理したりすることができない」ことに対する懸念の声が高まっていた。
欧州連合(EU)では2018年5月に施行されたGDPR(EU一般データ保護規則)によって、個人がパーソナルデータを企業内のシステムから持ち出すことのできる権利や、削除を要請する権利等を認めており、日本でも総務省や経産省主体で、自身のデータを管理する仕組みを実現するための議論が進められていた。
そこで日本でも現在、進んでいるのが、個人の代わりにパーソナルデータを安全に管理してくれる「情報銀行」の事業化である。
「情報銀行」は個人から預かったデータを個人の同意する範囲で運用し、そこから得た便益を個人に還元する仕組みを持つ。これによって個人は、自身のパーソナルデータをどの事業者に与えるか管理できるようになる。
また企業にとっても、個人の同意の上で情報を取得することができれば、より信頼性の高く精度の高い情報を入手でき、個々の顧客にフォーカスしたビジネスを行うことができるようになると考えられている。
野村総合研究所 流通・情報通信ソリューション事業本部 通信デジタル開発部 グループマネージャーの安増拓見氏は、「企業が『情報銀行』の機能を持ちビジネスに活用するケースについて、目的は3つに集約できる」と語る。
■類型Ⅰ スコアリング
パーソナルデータを用いて消費者の将来行動を数値化し、適合性評価へ活用するケース。信用度を数値化することで保険や金融業で活用されたり、職業適性、能力を数値化して人材業で活用されることが考えられる。
■類型Ⅱ インテンション抽出
消費者のインテンション(やりたいこと)を予測し、One To Oneマーケティングへ活用するケース …