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パーソナルデータとマーケティング

マーケターが押さえたい、データ利活用の現状

水野秀幸氏(情報通信総合研究所)

企業のパーソナルデータ利活用をめぐり、政府主導で制度化への議論や施策立案が進んでいます。そのなかで“データを活用する側”である企業やマーケターは、いかなる視点でこの動向を捉えるべきでしょうか。

    POINT

    POINT 1 ▶ 「パーソナルデータ」とは、個人の特定に結び付く情報を排除したデータ。

    POINT 2 ▶ 信頼できるプラットフォーマーか見極めるための知識が企業側に求められる。

    POINT 3 ▶ 変化を続ける国内外の「パーソナルデータ」の動向を注視すべし。

「パーソナルデータ」が今、注目される理由

「パーソナルデータ」にまつわる政府や産業界の動向が注目を集めている。2018年10月19日に開催された総務省と日本IT団体連盟による、「情報銀行(情報利用信用銀行)」の事業者認定に関する説明会には、当初の定員を大きく超えて、200社超、総勢410名の参加者が集まった。情報通信専門のシンクタンクである当社のもとにも、「『情報銀行』の事業を始めたいが、どうしたらよいか」との相談が寄せられている。

こうした動きを見るに、盛り上がりを見せているのは、自身が「情報銀行」としてデータを収集し企業向けに取り扱うプラットフォーマ―の立場を目指す企業が中心のようである。

しかし私は、企業でマーケティングや広告に携わる人こそ、この「パーソナルデータ」をめぐる国内動向を注視しておくべきだと考えている。自社では取得できなかった個人データの流通が活発化すれば、企業のマーケティングや広告活動におけるデータ利活用の幅はさらに広がるはずだからだ。

また、情報を扱うプラットフォーマーが今後増えていく可能性が高いことにも注目すべきだ。「どの会社から、どういったデータを取得するか」を見極め、自社のビジネスにいかに活用させていくかを判断するために、マーケター自身も正しい知識が必要なのである。

そもそも「パーソナルデータ」は、マーケターにとって身近なものであるはずだ。よく聞く「個人情報」との違いは、"個人を特定できるかどうか"。氏名や電話番号といった個人を特定しうる情報を含んでいるのが「個人情報」であり、個人の行動履歴などに紐づくものの"Aさんの行動"などと特定の個人に結び付ける情報を排除したデータを「パーソナルデータ」と呼んでいる。

「パーソナルデータ」を用いたマーケティングや広告の手法もさまざまだ。代表的なものが、企業が取得したデータを匿名性の高いデータへと加工した上で、個々の顧客の行動を分析し、パーソナライズした形でのマーケティングを行う方法。Web上の行動履歴データを用いて、次の画面にどの広告を表示すべきかを判断するターゲティング広告などが、その一例だ。

これまでも企業が活用してきた「パーソナルデータ」。いま、議論や制度改革が進められているのは、こうしたデータをこれまで特定の企業が集中的に取得し活用してきたことが問題視されているからである。

米国のGAFAと呼ばれる4つの企業、Google、Apple、Facebook、Amazonは、自社で大量のデータを取得していることを強みに、グローバルにおいてデータビジネスを圧倒的な力で牽引してきた。これに対抗するため、国内企業間で、あるいは他国とも連携して、データを安全に流通させていく仕組みをつくることが急務となったのだ。

@123RF

市場原理に委ねてきた米国 規制を強化したEU

米国では、データは"企業が管理するもの"という考えが強く、原則、企業が自由に取り扱うことができた。情報漏えいがあったり、消費者の意に反する使われ方をされたら、企業の信頼が落ちて業績が下がるはず …

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