多くのビジネスパーソンに愛読され、ロングセラーとなった『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版、2018年)。日本に「ティール組織」の概念を広めた嘉村賢州氏に、広告と組織のあり方についての考えを聞きました。
研究の中で気づいた企業に共通する組織の悩み
2018年1月に出版され、今なおロングセラーとして多くのビジネスパーソンに読まれている『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』。著者フレデリック・ラルー氏の提唱する「ティール組織」を日本で広めたのが嘉村賢州氏だ。
嘉村氏は10年ほど前に場づくりの専門集団NPO法人「場とつながりラボhome's vi(ホームズビー)」を立ち上げ、代表を務める傍ら、4月から東京工業大学でリーダーシップ教育院の特任准教授も務めている。分野横断型でリーダーシップを育む教育プログラムが教育院の特長だ。
「ホームズビーでは、プロジェクトやコミュニティなどの集団から大規模な組織まで、人が集うときに生まれる対立やしがらみを化学反応に変えるにはどうした良いか、研究・実践しています。せっかくひとつの場に集い、出会えた人たちがどのように協働を生み出しているのか、組織やコミュニティの運営方法を国内外問わず研究しているのです」。
10年間組織のコンサルティングを行う中で風土改革やイノベーション支援をしていくうちに、ベンチャー企業でも大企業でも、行政でも地方でも、組織の大小に関わらず、抱える組織の問題や悩みは同じであることに気づいたという嘉村氏。
「例えば離職率の高さ、メンタルヘルス、部署間の対立や、経営層と現場の意識差など、どの組織でも悩みは共通していました。そのことに気づいたとき、『これは人類が組織のあり方を間違えたのではないか』と思ったのです。
新しいサービスやテクノロジーは失敗から学び、磨いて新たなものが生まれてきますが、組織は人が関わっている分、変革することに時間がかかります。その結果、古くは軍隊などの統率型の組織が生まれてから、時代が変わっても小さな変化しか人類は起こして来ず、根本的には変わっていないのではないかという疑問がありました …