若手コピーライターの登竜門とも呼ばれる「宣伝会議賞」。言葉について正面から向き合い、コピーを考えぬいた応募期間の2カ月間は、その後のキャリアにどのような経験として残るのでしょうか。「宣伝会議賞」の受賞経験もあり、現在はコピーライターに留まらず幅広い活動を行う傍ら本賞の審査員も務めているこやま淳子さんに聞きました。
──当時、「宣伝会議賞」にどのような思いで挑戦していたのでしょう?
「宣伝会議賞」は一番簡単に応募できる賞なので若い頃は毎年、応募していました。協賛企業賞をいただいた経験もあります。当時は書きなぐって出す、という感じでした。
私はプロになってから本格的にコピーの勉強を始めたのですが、他の広告賞は実際に出稿したものに限定されていたり、デザイナーがいないと応募自体が難しい賞が多かった。コピーだけで誰でも応募できる賞は、「宣伝会議賞」と広告学校のラジオの賞があるくらいでした。
──協賛企業賞を受賞した際のお話をお聞かせください。
最初は良いコピーを書けば賞を獲れるんじゃないかな、と思って1本くらいしか応募しない年もありました。ですが、それでは全然上手くいきませんでした。こうして"根拠なき自信"が打ち砕かれて、(当時は紙での応募だったので)段ボール1箱分作品を送るようになり、それでようやく協賛企業賞が取れたんです。
その時、一番印象的だったのは受賞した作品が、自分が自信を持っていたコピーとは異なったことです。「え、これが?」という感覚でした。
今でもこの出来事を思い返すことがあります。それ以来、独りよがりに「このコピーが良い」と思いこまずに、周囲の方の声に耳を傾けてみるようになりました。自分が気付かない、自分のコピーの良いところを見つけてもらえることがあるからです。
──コピーを考えるプロセス自体が、経験として生かされることはありますか。
コピーを考えるプロセスには、広告の基本とも言えるエッセンスが詰まっているのではないでしょうか。具体的には、コピーを学ぶことが、人の消費活動の根源的な部分を考える練習に繋がっていると考えているのです …