保守的な風土の金融業界で、賛否両論を巻き起こすであろうメッセージ性の強い企画を実施して話題を巻き起こしたステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ。仕掛人である同社CMOに、前例のないアイデアを実現するための社内コミュニケーションについて話を聞いた。
「いいね!」数は70億 世界が注目した"少女"とは?
世界の主要な広告賞を多数受賞し、日本でも話題になったキャンペーン「Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)」。企画自体は非常にシンプルで、2017年3月8日の国際女性デー前夜に、米国の大手資産運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(以下ステート・ストリート)が、ウォールストリートに少女の像を設置したというもの。
なぜ、この少女が世界の注目を集めたのか。それは、この銅像がウォールストリートの名所にもなっている、巨大な雄牛の銅像(チャージング・ブル)の前に設置されたからだ。牛に立ち向かうように少女像を設置したことで、金融業界における男性優位の環境について問題提起したのだ。
このキャンペーンに関してソーシャルメディア上では2日間で15億の反応を獲得し、最終的には70億まで増加した。世界中では2500のメディアで露出があり、広告費に換算すると約3000万ドル(約34億円)の効果があったという。また、米・英・オーストラリア・カナダ・日本の同社投資先企業において、女性取締役が300名以上誕生したことにも貢献した。
大きな話題と結果を残した企画だが、前例がなく結果も見えないアイデアをどのように実現させたのか。企画を仕掛けた、同社CMOであるスティーヴン・ティズデイル氏に、その裏側を聞いた。
良いアイデアは、社内外に大きな流れをつくる
そもそもステート・ストリートは当時、どのようなマーケティング課題を抱えていたのか。ティズデイル氏によると、世界第3位の資産運用会社として名前は知られていたが、その事業内容については充分理解されていないことに問題意識を抱いていたという …